クロネッカーが見た三千世界〈 QK 〉

サビ、プレスト、愈々 - 4 ページ26

side : kwmr




『修正した企画の確認』と銘打たれたそれは本当に滞り無く、そして恙無く、5分ほどで終わりを迎えた。


企画自体にも、そして福良にも特に問題点は見当たらない。まさか昼食のことを知らないはずはないだろうに。




「…河村？」




俺の手が中々動かなかったからだろうか。それとも変な顔でもしていたのだろうか。企画の確認を終え、また仕事に戻った福良に名を呼ばれた。



目を合わせる。

不思議そうな、ただ心配も入り混じる様な視線に射抜かれた。何故だかあまり良い心地はしない。





「どうかした？

　…あんま見られてると気になるんだけど」





そう笑った福良に、妙な既視感を感じる。




──難しいな、知り合い同士が恋人関係に陥った場合における第三者の立ち回りというのは。


付き合い方がわからない。Aと距離を置くのも難しいし、かと言って福良を気にしないなんて無神経なことが俺にできるわけもない。





「…いや、」




そんな思考を挟み、数秒の間を置いて。俺はやっとこさ福良に短い返事をした。

次いで一息。福良がじいと俺を見つめるのと同時、Aが誰かと笑い合う声が聞こえた。




…さて、口を開いたは良いが、何をどう尋ねるべきか。


生憎こういった経験は皆無である。1番に仲が良いと言って良い女友達に彼氏ができるのも、友人同士が付き合うのも、それに、──。







「──福良ってさ、Aのこと好きなの？」






福良が面食らった様な顔をした。


ちなみに俺も驚いた。


何でこんなことを尋ねたのだろう、聞くにしても遠回りすぎやしないか。…いやこんなことを言ったのは間違いなく俺の口なんだけど。



ただもう聞いてしまったものは仕方がない。大人しく後悔と共に返事を待てば、福良はくすりと笑って俺を見る。いつもの顔だった。






「そりゃあ好きだよ。じゃなきゃ付き合わないでしょ」


「…Aの方は倦怠期だって言ってたけど」


「え、ほんとに？マメに連絡取ってる方だと思うけどなあ」




「構わなすぎたかなあ」。福良はそうぼやき、ちらと視線をどこかへ逸らす。


釣られて視線をやった先にいたAは、どうやら隣席の乾が持つ菓子をねだっているらしい。まだ食うのかあいつ。




それを見た福良はまたくすりと笑う。



見るからに愛おしそうで仕方がなくって、何だかもう考えるのも面倒で。またAに目をやった。





Aはいつもの様に、へらへらと笑っていた。






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