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人は考える葦だと仰いましたが - 2 ページ44

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川上さんはとっても素敵な人だった。


ライターとして入ってすぐの頃、右も左もわからずおろおろとしていた私に初めて声を掛けてくれたのが彼で。


そのおかげでオフィスの空気に早く馴染むことができた。今じゃここに来るのが楽しみで仕方がないのだ。




「あ、……あの、川上さん」

「ん?」

「お茶、淹れたんですけど…。…ど、どうぞ」



私が彼のことを好きになるのは時間の問題だった。

自然と目で追うようになって、一言でも話せれば幸せで、時折胸がきゅうと痛くなる。恋だと気づかないわけもない。




「…おー、ありがと」


川上さんは私と私の手元のお茶を数度見比べ、柔らかく微笑みつつそれを受け取る。自分でも哀れになるくらい胸が弾んで。

これ以上隣にいたら顔がだらしなくなる。くるりと方向転換、小走りで自身の定位置に戻った。



「お疲れさん」


その隣でこちらを伺いつつ待ってくれていたのは須貝さんである。

昨日のこと。何故だか誰にも言っていない私の恋心を見破ってきた須貝さんは、自然と私の恋を応援してくれることになっていた。


今回のお茶だって持って行けと言ってくれたのは須貝さんだ。1人だったらそんな勇気もない、とってもありがたかった。



「…あの、不自然じゃなかったですかね…?」

「大丈夫大丈夫!ばっちりだったから」



ホッとした。須貝さんがそう言ってくれるなら安心だ。



須貝さんはとにかく人が良い人だった。

私の気持ちを見抜いた辺りとっても周りを見ているのだろうし、私をお手伝いしてくれる優しい人。


年長者ということもあるのだろうけど、その明るくて陽気な人柄は私にはないものだからとても羨ましい。と、同時に助けられている。



何で私を助けてくれるのだろう。

やはり兄気質なのだろうか。大きくはないが年の差がある私に対し、世話を焼きたくなってしまうのか。いずれにせよありがたい。




「……」

「……」

「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だって。ちゃんと淹れたんでしょ?」



小さく頷き、ふと川上さんを見やった。

ちょうど私が出したお茶を一口飲んでいて、それだけでドキリとする。『大丈夫』と言われたって不味かったらどうしよう。



──…と、そんな心配をよそに、川上さんは特段何を気にする様子もなくまたパソコンをいじり始める。


「ほらね」と須貝さんが言った。何だか少し、安心した。






考えられるからこその面倒もあるわけで - 3→←拝啓、パスカル先生へ - sgi



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山田 - 本当にお話を考えるのもそれを文章にするのもお上手でただただ尊敬です… (2022年10月12日 0時) (レス) @page24 id: 5e51f51780 (このIDを非表示/違反報告)
あー - 河村さんの話がめっちゃ良かったです! (2020年8月21日 18時) (レス) id: e630ce1c5f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 290円様。あなたの三角関係系の小説すごく好きです。もちろん他の作品も好きですが、これらは小説としての魅力がずば抜けてます。あとたまに読み手に一抹の恐怖を与える作品も最高です。起承転結がしっかりしていて大好きです。まとまりのない長文を失礼致しました。 (2020年1月29日 3時) (レス) id: e047a9674f (このIDを非表示/違反報告)
むー - 好きすぎて更新されるたび心の中でガッツポーズしております。これからも楽しみにしてます…! (2020年1月22日 21時) (レス) id: 1dbbe6e605 (このIDを非表示/違反報告)
めろぱん - コメント見て頂けたようで嬉しいです!後日談楽しみにしてます…ありがとうございます…あと他の方もコメントされてますがキューピッドの続編のキャロルもめっちゃすきです…悲恋系のお話大好物なので最高です…心を鷲掴みにされました。こちらのifも楽しみにしてます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 18726b033e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:290円 | 作成日時:2019年9月25日 17時

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