がんばろう神様 - 2 ページ41
side : kwmr
12月23日。そう、今日はクリスマスイブの前日。
つまり、クリスマスの予定を尋ねるチャンスとしては最終日ということになる日である。
……いやまあ、別に。クリスマスに特別な思いがあるわけではなかった。
積極的に参加するタイプではないし、毎年楽しみにしているわけでもない。今年も適当に過ごすだろうと思っていたのだけど。
「河村」
昨日の夜の話。オフィスから帰ろうとしていた俺に話しかけてきたのは福良だった。
振り返って「ん?」と用件を尋ねる。福良は変わらぬ様子で口を開いて。
「クリスマスさ、Aちゃん誘わないの?」
そんなことを、言ってのけたのだ。
──で、一晩が明けた今日。
あんなことを言われちゃ意識せずにはいられない。
惚れた弱みと言うのか、今日は朝から仕事が全く手に付かなかった。
…いや、実のところ。
誘おうかどうかは福良に言われる前から悩んでいたのだ。…もっと言うと1ヶ月くらい前から。
ただ実行に移す勇気がなく、迷っていたところに福良からのあの発言。正直背中を押されてしまった。
誘いたい。一緒にいたい。
……というかそろそろ、進展があってもいい、はず。
視線を彷徨わせれば、近くにいた福良と目が合った。「行け」と呼ばれている気がしてならず、席を立って。
「手止まってるよ」
こちらに背を向けてパソコンに向かう彼女に、声を掛けたのだった。
*
side : you
「……はい?」
思わず尋ね返してしまった。
明日?明日って…クリスマスイブ?…イブの予定を何で河村さんが聞くんだろう。
正直なところ相手が相手だから答えるより先に思惑を考えてしまう。…この人私に仕事押し付けようとしてないよね。怖いんだけど。
じいと河村さんの目を見つめた。無駄にきょろきょろとしている。
数秒の沈黙。
河村さんは一度口を開いた。何かを言いかけて閉じ、口ごもる。
嘆息する彼は「あー」だとか「くそ」だとかを小さく呟き、私とまた目を合わせて。
「……もういいや、」
「え?」
「…回りくどいのもあれだし、さっさと言うことにする」
恐らく今の私の表情は「ぽかんとしている」が適当だろう。河村さんが何を考えているか想像がつかない。
「……クリスマス、一緒にいたいんだけど。予定ある?」
何の躊躇いもなく発せられたそれ。
その言葉で、何の身構えもしていなかった私の頭はいよいよキャパオーバーを迎えた。
→
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山田 - 本当にお話を考えるのもそれを文章にするのもお上手でただただ尊敬です… (2022年10月12日 0時) (レス) @page24 id: 5e51f51780 (このIDを非表示/違反報告)
あー - 河村さんの話がめっちゃ良かったです! (2020年8月21日 18時) (レス) id: e630ce1c5f (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 290円様。あなたの三角関係系の小説すごく好きです。もちろん他の作品も好きですが、これらは小説としての魅力がずば抜けてます。あとたまに読み手に一抹の恐怖を与える作品も最高です。起承転結がしっかりしていて大好きです。まとまりのない長文を失礼致しました。 (2020年1月29日 3時) (レス) id: e047a9674f (このIDを非表示/違反報告)
むー - 好きすぎて更新されるたび心の中でガッツポーズしております。これからも楽しみにしてます…! (2020年1月22日 21時) (レス) id: 1dbbe6e605 (このIDを非表示/違反報告)
めろぱん - コメント見て頂けたようで嬉しいです!後日談楽しみにしてます…ありがとうございます…あと他の方もコメントされてますがキューピッドの続編のキャロルもめっちゃすきです…悲恋系のお話大好物なので最高です…心を鷲掴みにされました。こちらのifも楽しみにしてます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 18726b033e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:290円 | 作成日時:2019年9月25日 17時