儚き天使【賢者の石】 (ページ13)

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「……ねぇドラコ」

「言いたいことはわかってる、いつ見ても可愛い」

これは朝の蛇寮の談話室でのパンジーとドラコの会話だ。

「可愛いけど！！！…流石に浮かれ過ぎじゃない？」

2人の目線の先には、いつもより早く起きて、髪を編み込みにしたAの姿があった。

いつもは感情が読み取れないのに、今日は心なしか周りに花が飛んでいるように見える。

パンジーは、冷静でクールなAしか見たことなかったので、とても驚いているのだ。

「Aは、今日みたいな行事ごとが好きなんだ。その中でもハロウィーンは特別さ。」

そう、今日は10月31日、ハロウィーンの日なのだ。

呆然としているパンジーを置いて、ドラコはAの元へ歩いて行った。

「おはようA」

『ドラコ、おはよう』

いつもの挨拶、のように見えて少し違う。

その違いは、普通の人なら分からないほど小さいものだったが、いつも一緒に行動しているパンジーや長年側にいたドラコはすぐに気付いた。

「A、なんでそんなに笑顔なのよ…」

談話室にいたパンジーたちを除く蛇寮生全員が、どこが笑顔なんだ、と思った。

そこには変わらず表情の読めないAの姿があるだけだった。

『今日はどれだけお菓子を食べてもいい日なのよ？』

趣旨はだいぶ違うが、確かにお菓子はたくさん貰える。

Aは、幼少期から体が弱かったため、普段から健康食を食べさせられていた。

過保護な両親は、お菓子なんて体に害しか無いのだからと与えていなかったが、パーティの時だけは好きなだけ食べさせることにしていたのだ。

「そういう訳じゃないと思うけど…」

『さぁ、パンジー、ドラコ、授業へ行きましょう』

上機嫌のAに、パンジーの言葉は聞こえていないようだった。