検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:262,167 hit

94話 ページ47

そして数分後だ




「……む」


「どうしました太宰さん?」




太宰さんが突然ガタッと立ち上がり、顔を真っ青にしてお腹を押さえた




「これ……食べ過ぎた所為か、急に差し込みが……」


「え?」




そう云って見せるのは空になったドックフードの袋


阿呆なのかこの人




「敦君、私と私の胃腸はここが限界だ。探偵社を頼んだよ」




塵芥を預けてる何処かに駆け足で向かおうとする


けど、彼の外套を掴んで引き留めた



否、正確には手が自然に動いて引き留めた




「あ、敦君?これは一体何の拷問だい……?私、限界なのだけど……」




何故引き留めてしまったのだろうか


だなんて疑問の答えは自分が一番判っている




「……成る可く、疾く……戻って来て下さい」


「えっ……?」


「……あっ、ああ!引き留めて済みません!」




掴んだ彼の外套を離して謝る

そしたら太宰さんは少し停止してから思い出したかのように再び慌てて駆け出して行った




何故彼を引き留めてしまったか


怖かったからだ



何度も思っているが、こんな冷静に状況判断をしていようとも怖いものは怖い


何せ私はこんな戦争なんか程遠い平和呆けした世界で退屈に過していたのだから



後で来ると判っていてもあの恐怖を体験する時間が長いと思うと躰が震えて堪らない


実際は震えてないけどそれ位って事だ




数分後に確実に起こる運命に逆らう術もないのだから覚悟は出来てるんだけど……


それでも、ねぇ?




『間もなく列車が到着いたします』


「!!」




さぁて、切り替えよう

切り替えなきゃ遣ってけない


時間通り着いた列車から出てきたのは予定通り事務員の二人だ




「春野さんナオミさん!ご無事でしたか!」


「ええ……でも真逆、事務員が狙われるなんて」


「安心して下さい、僕達が避難地点まで護衛しますから!」




だなんて胸を張るなんて私には難しい

君も善くやるね


でも守らなきゃいけないのは確かだ




「そうだ紹介しますわ。列車の中で知り合ったのですけど……」




列車から一人の少年が出てきて真っ直ぐ此方に向かって来る



さぁ、運命を受け入れろ(覚悟を決めろ)




「おっと」




その少年はぶつかって来た


その侭少し歩いて立ち止まり此方に振り向く



その少年から……夢野久作から放たれる何かに背筋がゾッとした




「籠のなぁかのとぉりぃは」


「ッ…」




そんな彼が見せてきたのは包帯が巻かれた刃が刺さった腕だ

95話→←93話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (232 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
287人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

銀色ミカン(プロフ) - 1話から一気見しちゃいました!面白いです!更新待ってます。頑張ってください! (2017年12月17日 2時) (レス) id: c55513f974 (このIDを非表示/違反報告)
時雨零(プロフ) - お待ちしておりました!おかえりなさい! (2017年11月14日 0時) (レス) id: 7585b82a1c (このIDを非表示/違反報告)
芋娘@悪の伝道師?ウリエル?(プロフ) - ファッ!?オーストラリア!?あらまー…お気を付けて!! (2017年10月31日 14時) (レス) id: a51cded6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅月(プロフ) - オーストラリア!!!羨ましい…!楽しんで下さい!!! (2017年10月30日 22時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
ロイゼ@魔法契約民(プロフ) - いってらー、です! 楽しんできて下さいね(^^*) (2017年10月30日 16時) (レス) id: 677bf3b84c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:のんのーー | 作成日時:2017年10月15日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。