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85話 ページ38

乱歩side



判らなかった


今目の前に居る敦君の姿の彼女が何を考えているか

気力の無い目で笑みを浮かべる彼女が何を思っているのか



だから話をしようと持ち出した。でも彼女は話すのを拒む


まるで深入りするなと云う様に




「教えてよ。流石の僕でも人間の心理は完璧には判らないんだから」


「……」




敦君もとい彼女は、Aは俯いて黙り込む


十秒、二十秒と沈黙が続く

口を割らないなら自ら話し掛けよう




「ねぇ」


「乱歩さん」




僕から話し掛けたのにそれに被せてAが口を開いた


そして顔を上げて此方を向く




「邪魔な荷物は、置いて行かなきゃ」


「……!」


「ゴミはゴミ箱に捨てなきゃ駄目ですよ」


「っ、」




そう云い放つ目の前の彼女は凄く優しい笑顔で

それで居て、矢張り何処か泣きそうな顔をしている



何でそんな事云うの

何でそんな云い方するの




「自分の存在が要らないみたいに云うなっ……」


「事実、そうなんですよ」


「違うッ!」




思わずテーブルを強く叩いて立ち上がった

此処の店に居る客が僕達だけだったのが幸いだろう




「そうじゃないですか。私は敦と云う存在を退かしてまでこの躰に居ると云っても過言では無い……こんなのお荷物です」


「荷物とか云うなッ!」


「じゃあ他に何て表現すれば良いんですか。邪魔者ですか、ゴミですか」


「自分を卑下するなッ!何でそこまでして自分の存在を拒否するの!?君は……君はちゃんと生きているんだッ!この躰で、この場所にっ……」


「だから必要無いんです」


「……ッ!!」




芯の通った声でスパッと云い切った


その目は深い海の様に奥が暗くて見えない

これだ。何かを諦め、酷く絶望している瞳だ……




「こんな忙しい時にこの話題を持ち込むのは止めましょう。今はこんな事より大事な事がありますから」




こんな事って云うな



そう云いたかったのに声には成らなかった

力が抜けて再び椅子に座り込む




「それに、何故そこまでして私の事を知りたいんですか」


「……えっ」


「知りたがってるのも不思議だし、私が自分を卑下する事を否定するのも不思議です。それは私の自由でしょう?」




確かに今考えればそうだ


何故此処までして彼女に突っ掛るのだろうか

何故こんなにも放っておけないのだろうか




「……さぁ、そろそろ帰りましょう。仕事があります」


「A…」


「…?僕は敦ですよ?」




僕には判らなかった

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銀色ミカン(プロフ) - 1話から一気見しちゃいました!面白いです!更新待ってます。頑張ってください! (2017年12月17日 2時) (レス) id: c55513f974 (このIDを非表示/違反報告)
時雨零(プロフ) - お待ちしておりました!おかえりなさい! (2017年11月14日 0時) (レス) id: 7585b82a1c (このIDを非表示/違反報告)
芋娘@悪の伝道師?ウリエル?(プロフ) - ファッ!?オーストラリア!?あらまー…お気を付けて!! (2017年10月31日 14時) (レス) id: a51cded6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅月(プロフ) - オーストラリア!!!羨ましい…!楽しんで下さい!!! (2017年10月30日 22時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
ロイゼ@魔法契約民(プロフ) - いってらー、です! 楽しんできて下さいね(^^*) (2017年10月30日 16時) (レス) id: 677bf3b84c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のんのーー | 作成日時:2017年10月15日 20時

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