【銀魂】光に焦がる虫

心地が悪い ページ25

ー土方サイドー





静けさが漂う古い港の一角。
待機する隊士の間に流れる緊張感が、
辺りを包んでいた。






「・・ベタな奴らですねィ。港で取引なんざ」

「アホか。実際、港ってのァ扱いやすいんだよ。
海上なら下手に見つかる危険がすくねェ」




総悟に関していえば、
溢れ出る文句を隠す気はないらしい。

そんな様子にため息を漏らす。


何たって今回の相手は小物じゃない。
武器売買のデケェルートを持っている奴らだ。
しょっぴけば、後から出てくる面倒ごとってのも
いっぺんに解決できるだろう。








「ーーーお、」

「どうした」


「おいでなすったみてェですよ。ありゃ相手方か」





どうやら、水岡たちのグループと取引をする相手が
先に姿を現したようだった。

いかにも小物感漂うそいつらに比べ、
おそらく本命様はいくらか利口なんだろう。



配置した隊士たちが、刀に手をかけるのがわかる。

ーーー水岡たちがやってきたタイミングで、
一気にしょっぴく。下手な回り道は必要ない。



新たに火をつけたタバコから、静かにのぼる
煙を横目に捉えつつ、・・数人の足音を聞き取った









「ーーーー・・今だ」





指示を出してからは早い。
迅速に正確に。作戦の通りに進むことなど
滅多にないのだが、それでも、予想外の展開に
なったとき、いかに取り乱さず陣形を崩さないかが
鍵なのだ。




数々の怒声が響きあう。
その中に同時に身を投じた俺は、

ーーふと、隅で怪しげに余裕の表情を浮かべた、
水岡の姿をとらえた。


この現状に特にそのツラを曇らせることもなく、
少し眺めたあと、・・ゆっくりと建物の影に
消えていく。



とっさにそれを追いかけた。
どれだけ小物を捕まえても意味がない。

今回重要視するのは、水岡信彦だ。



そいつが消えた倉庫へと忍び寄り、
すでに扉が壊れ開けっ放しとなったそこへむけて
勢いよく飛びこんだ。









「ーーーー真選組だァァア！！神妙にしやがれ！」




自身の声がこだまする。
高い天井。埃臭い倉庫の中で、ぽつんと一人、
男が佇んでいた。







「・・・水岡信彦だな。一緒に来てもらう」


「ふふふ、無能と言われてるわりには、
警察も案外やるじゃないか。見直したよ」


「・・あ？」





俺の声が聞こえているのかいないのか、
水岡は楽しげに笑いを交えて話し出す。

その狂気じみた姿に、少しの心地の悪さを
感じずにはいられなかった。

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