【銀魂】光に焦がる虫

損な性分 ページ18

(ーーあれ、)




呆然と一部始終を眺めていた私は、
その男性の後ろ姿に違和感を覚えた。

何だろう。見たことがある気が______。







「・・たくよー、昼間っから盛りやがって。
テメェらだけが欲求不満だと思ったら
大間違いだかんな雄犬どもが！！」

「えっと、」

「あ？」



まるで唾を吐きかけるようにそう言ったその人は、
私の方を振りむいた。





「・・あー、まあ、あんたも災難だったな。
ここら一帯はこういう輩が多い。気をつけろよ」




「ーーー思い出した」

「は？」







・・そうだ、思い出した。

クセの強い銀髪と、生気のない目。
ーーーあのとき、・・私がふらりと町に出たとき
たまたま出会ったあの男性だ。

思わず「久しぶりだね」と声をかければ、
男は怪訝そうにこちらを見つめた。





「・・誰。・・・あ、もしかして五反田川？
あれから大丈夫かよ腰のヘルニア」

「五反田川ではない」




ついでにいえば腰のヘルニアでもない。

どうやら、このお兄さんは私のことを
覚えていないらしい。

あれだけ偉そうなことをのたまっておきながら、
説教垂れた相手を忘れるなんてどういうことだろう







「話を聞いてくれたじゃないか」




数秒間、私の顔を見つめた銀髪のお兄さんは、
「ーーあぁ！」と。





「泣きじゃくってたねえちゃんか」

「泣きじゃくった覚えはないけどね」



そりゃあ、ほろほろっと涙が出たのは認めるが。






「意外と元気そうじゃねーか」

「そうかい？」


「少なくとも、前よりはまともなツラになった」





へらりと締まりのない笑みを浮かべたお兄さん。
自分ではわからないけれど。

まあとにもかくにも、助かった。





「・・で、ドラマよろしく悪人に追っかけられるなんざ、どんな了見だ？」


「さてね。私にもさっぱりさ」




もうひと雨きそうな天気だ。
銀髪のその人は、少しの間考えるそぶりを
見せていたが、やがて。







「ーーしゃあねぇ。一旦うちにこい」


「・・え？」

「まだ追いかけっこ続ける気か？」





つまるところ、匿ってやると言っているらしい。

目を丸くした私に、「行くぜ」と声がかかる。
・・やはり彼は、随分損な性分をしているらしい。


追われていた怪しい女を匿うなんて。
面倒ごとに巻き込まれることになるってのに。









「ーーー・・ありがとう」




暖かな人柄に触れたのは、いつぶりだろう。
鼻の奥がツンと痛くなった。

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