【銀魂】光に焦がる虫

落とし前 ページ11

ー土方サイドー




晴れ渡った空の下。
足元にたまった古い枯葉をふみ鳴らしながら、
俺は白い息を吐き出した。


近頃は温暖な気候に入ってきたと思っていたが、
急激にまた、気温が下がっているという。
何の異常変化が起きているのやら、
俺には知ったこっちゃねェ。







「最近は夜出かけてねーみたいですね」

「あ？」


「フラれでもしやしたか？」


「・・俺だって眠りてェ時はある」

「の割にゃツラ構えが悲惨なことになってますが」





ーーーあの日、あいつに好きだと言われた日から、
俺は遊郭に行くのをやめた。

それはあいつからのメッセージでもあった。

泣きそうなツラで言い放ったAにかけてやる
言葉など見当たらず。ただ単純に、「そうか」と
納得を示しただけだった。



女は、こうなったのは自分のせいだと
言い張るんだろうが。・・落ち度は俺にある。


通うことをやめて考えた末に出た結論だった。






(・・結局は、惚れてたっつーことか)



そうでなけりゃ、一人の女にあれだけ執心することも、好きだと言われ胸が痛くなることもない。

二度と会わないと自ら宣言した以上、
何をするわけにもいかず。ーーひたすら、手前ェが
中途半端にしまい込んでいた気持ちを痛感するに
とどまっている。







「・・そういやぁ、例の水岡信彦のことですが、
どうにもすげェの釣り上げたみてェですね」


「あぁ」

「こりゃ大物でさァ。当初の作戦が簡単に成功する
確率は低いですねィ」




予想の範疇を超える勢力だったとだけ
言っておこう。

水岡信彦について調べれば、掘り下げるだけ
湧き出てくる犯罪歴。こりゃ放っておけば
事業拡大ってこともあり得るだろう。


面倒なことになる前に叩くつもりが、
元より面倒な大事であった。






「これまで全くと言っていいほど、俺たちに
情報や素性が漏れなかった。それだけ強固な
守備ってことだ」


「その強固な鎧も、お気に入りの女の前じゃ、
脱ぎ捨てちまうんですかねィ。それとも、例の女は
相当なテクの持ち主だったり？」


「・・野暮な野郎だなテメェは」





俺はAに対して、何の落とし前もつけていない

手前ェ勝手に利用したことについても。
自分の気持ちについても。

まだ、あいつの言葉に返事さえしていない。


このまんまあの女の存在を消滅させちまう気には、
なれなかった。









(ーー落とし前、つけなきゃな)

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