【銀魂】棘を包んだ花

ちょっとアレな女 ページ40

ー沖田サイドー




ーーそう、こいつは女だ。ただの女だ。

ちょっと馬鹿でかい家に住んでて、
ちょっと馬鹿高い料理食って、
ちょっと高級な着物で着飾った、

ただの女。



華奢な体、流れる髪、白い肌。
どれもこれも、強さなど感じさせない。
そこらへんを歩く女と、何も変わらない。






「無作為に胸元を撫でられるのも、頬を掴まれるのも、とても屈辱で怖くて。・・本当、耐えられるものではないわね、あれは」




泣かねーのかと問いかけたはいいが、ーーそうだ。
そいつのポイントはそこじゃねェ。

本音を隠し、気高く構えることが得意なのだ。
大切なのは、隠れた本音。








「・・今日はやけに素直ですねィ」

「いいでしょう？これ以上強がっていては、
私の体も心も持ちそうにないの」




釣り上げた形のいい口元が震えている。
それが、そいつの本音を表しているのならば。








「ーー俺ァ女慰めんの気の遣い方もよく知らねェ。
んなもん面倒な作業でしかねーんだ。・・だが、」





今の俺は、メンタルケアを、土方コノヤローに
押し付けられたところなのだ。

いつもならば聞かねェところだが、この状況、
女は駄々をこね出してからが本番なのだ。
何とかその事態は避けたい。



・・・なんつって、大層な理由をいくら並べても、
今俺にできることは変わらねェ






「特別でさァ。ーー今日はめいいっぱい、あんたを
慰めてやる」




こんな甘くて気色の悪い言葉を、まさか自分が
あんなに使うなんざ。苦笑にも似た気持ちを抱えながら、その女の沈黙を受け取って少し。








，









「ーーー抱きしめなさい」





ぼそりとこぼされた言葉が
静かな車内では、こだまするように俺の耳に
しっかりと届いたのだった。


断る理由など存在せず。ーーまたいつものように
焦らしプレイなんつーことも気分が乗らず。


ただただ、俺も、この崩れそうな女を抱きしめたい


そう思ったのだ。





「しかたねェな」





腕の中へと収まった女は、安堵したように
一つ小さな吐息を落とす。

回された細い腕は、俺の服をしっかり握りしめ
首筋に埋もれた顔は、赤くなり始めた。








「・・そういや、あんたこれ浮気じゃねーんですか
結婚してましたよねィ」


「失礼ね。元々うちの親戚と明江家のご家族の馬が
合わなかったの。長政様が亡くなった後、
あちらから縁切りをご提案なされたわ。

ーーー私たちのこれは、正式なお付き合いよ」

気持ちのいい時間→←一欠片の本音

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