【銀魂】棘を包んだ花

煩い ページ12

ー沖田サイドー




「総悟ォォオ！？テメッ、昨日までの報告書まだ
未提出だろ！？・・って、」




え、何してんのお前、と。
派手な音をさせて障子を開き、入ってきたそいつの
勢いは、一瞬で静まった。






「・・ったくうるせェ野郎ですねィ。
見てわかんねーんですか。押し花ってやつでさァ」

「は？押し花？」




素っ頓狂な声を出した土方さんは、
混乱を抱えたままのツラで俺の手元をのぞきこむ。

小さな花は、気を抜けば俺の手で握りつぶして
しまいそうなほどに華奢だ。







「・・花に目覚めちまったのか？いやいや、どんな
きっかけだよお前がそんなことになるなんざ」

「副流煙撒き散らして常に環境汚してる野郎にゃ
風情なんざ理解できねーでしょ」


「んだとコラ」




花に目覚めたというわけではない
元来俺は、花やら風景やら、そんなものに
興味はねーんだ。

ただ、あの女が余計な情報を俺にあたえるから
ーーこの花を見過ごせなかったというだけで。






「ハルジオン」

「あ？」

「この花の名前でさァ」





ちょいと調べればすぐにでてきやがった。
しかも、春にかけてチラホラといたるところに
咲き始めるらしい。







「・・ったく、最近様子がおかしいとは聞いてたが
本格的にヤバイなこりゃ」

「いたって正常なつもりなんですがねィ」




近藤さんが心配していた、と。
確かに、ぼーっとしていた節はあったかも
しれないが。ーーいや、重症であることに変わりは
ねェのか。








「まあとにかく、だ。テメェがいくらおかしく
なろうが何だろうが構わねーけどな、
それ終わったら報告書を真っ先に書け、いいな」


「尽力しまさァ」





俺の異常に気づいたらしい土方さんは、
柄にもなく気を遣ったのか、それ以上何も言わず
部屋を出ていった。

気持ちの悪ィこともあるもんだ。







「ーーーさて、俺自身、どうするつもりなのか、
さっぱりわからねェや」





ただ、煩いが消えることはない。

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