ちっぽけな ページ6
沖田の言葉は、理解できるようで、理解できない。私の居場所は、父上や女中が待つ滝峰家のお屋敷であり、他の何者でもない。
ーーそれを、彼は一つに定める必要はないという。
(・・それが許されるというならば、)
この場所を、ーーこの街を、私の帰る場所と
定めたとしても、構わないのだろうか。
「沖田、」
「言ったでしょ。俺ァあんたの護衛は引き受けるが
媚びへつらうつもりはねェと。お嬢様として
接したことなんざ、今の今まで一度もねーんだ」
しばしの沈黙。
どこか心地よいそれの後、
「ーーーA」
彼の口から漏れたのは、
・・至極むず痒いものだった。
「"サマ"付けは形だけでさァ。あんなもんに、
気持ちなんざこもっちゃいねェ」
捨ててもすてなくても、同じ意味なのだと。
そんな暴力的で無理矢理な理論が通じるのかと
反論したいが、ーーしかし、それがもし本当ならば
私はこの人の前で、"お嬢様"を脱ぎ捨てることが
できるのだ。
ーーー胸が、ぎゅっと締め付けられるようだった。
寒くて痛くて仕方なかった体が、
ぐわっとこみ上げてきた熱で温まる。
そうして____、
「・・・いいんですかィ、こんなことしちまって」
ーーー気がつけば、隣に座るその人を、
抱きしめていた。
いつぞやに嗅いだことのある匂いが、さらに私を
落ち着かせていく。
「嫌なら、振り切ればいいのではなくて?」
「・・・そりゃ、ずりィや」
参ったというように呟いたその男は、
ゆっくりと私の背中に手を回した。
さするように、優しく撫でられて。
トクトクと心地いい鼓動を感じながら、
私は目を閉じた。
「ーーーパパの前じゃ、甘えられねーかィ」
「父上はお忙しいの。私などがワガママを言える
お方ではない」
「そうかィ」
ぷつりと切れた私の中のプライドは、
案外ちっぽけでくだらないものだと気づく。
権力など何でもない。
それを教えてくれたのは、沖田なのだ。
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シュシュ☆☆(プロフ) - ミズキさん» ありがとうございます!お忙しい中、こうして足を運んでいただけることが、本当に感謝でいっぱいです!楽しんでいただけていれば嬉しいです! (2018年1月23日 18時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
ミズキ - 完結からかなり時間が経ってしまい、失礼ながらコメントさせて頂きます。夢主ちゃん可愛かったです!初めて真撰組に来た時と比べて性格も成長し、沖田君とも無事結ばれ・・これからも二人のほのぼのとした幸せが続く事を願っています(笑)新作も頑張ってください! (2018年1月23日 16時) (レス) id: d90ef8a117 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございますっ!ほのぼの系目指してたのでそういっていただけて嬉しいです!最後までお付き合いくださいまして、本当に感謝です! (2018年1月7日 8時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 少し遅くなりましたが、完結おめでとうございます!!なんといっても夢主ちゃんが可愛らしくて好きでした!沖田さんとの掛け合いにもほのぼのしました!素敵なお話をありがとうございます!お疲れ様でした! (2018年1月6日 22時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます!無事完結です!2018年、いいスタートを切れればと思います!2017年は、応援ありがとうございました! (2018年1月5日 19時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年12月9日 23時