【銀魂】困惑必須の受愛物語

素直でいること ページ20

穏やかに鳴く野生の鳥。

少し町の外れにきてみれば、小さな公園、
明らかに人が入っていない駄菓子屋、ーーその奥で
団扇を動かすおばあさん、走り回る子供。

様々な光景が私の目に飛び込んできた。








「落ち着いた星だなぁ」




アキ、といったっけ。
比較的気候の穏やかな、過ごしやすい季節だ。

すぅ、と胸いっぱいに息を吸えば、
何ともいえない自然の匂いが広がった。








「ーーーお姉さん、一本どうだい？」




立ち止まっていた私に手招きをしたのは、
さっき見えた駄菓子屋のおばあさん。

にこやかにこちらに掲げた手には、アイスバーが
握られていた。









ーーー
ーー



「ーーいただきます」



購入したアイスバーから、
ぺり、といい音を立てて包み紙が取れた。

駄菓子屋のベンチに腰かけ、アイスを小さくなめとれば、口中にふんわりと、甘さが広がった。
ストロベリーと書かれたピンクのそれは、
確かに、わざとらしいイチゴ味。






「お姉さんは、OLさん？」

「・・まあ、そんなところです」


「そうかいそうかい。じゃあ今日は休みかね」

「はい。・・休む気はなかったのですが、上司が
勝手に有休取っちゃったみたいで」




ため息とともに吐き出せば、おばあさんは
クスクスと笑いをこぼした。




「へぇ、いい上司じゃないかい」

「よくありません。・・あの男ときたら、
仕事はサボるわ問題は起こすわで、いい加減に
してほしいです」




風鈴、といったっけ。
店先で揺れるそれが、チリンチリンと音を立てる。

それに合わせて、虫の声が聞こえていた。






「大好きなんだねぇ、その上司が」

「ッ、はい・・？」


「悪態ついてる割には、嬉しそうに喋るもんだから
てっきりそうなのかと思ってね」




思わずアイスを落としそうになった私に、
おや、違ってたらごめんよ？、と。
確信めいた言葉は、こちらの口をつぐませた。

ーーー確かに、地球人とはずる賢いのかも。






「女は常に素直でいるべきだ。・・男ってのはね、
いつフラリといなくなっちまうか、わかったもん
じゃないからねぇ。言いたいことやりたいことは
ちゃーんと伝えなきゃダメだよ？」


「私は、別に・・。」


「そのうちわかるさ」




フラリといなくなる。ーー団長にぴったりの言葉だと思った。・・きっと奴は、知らぬ間に一人でいなくなる。そうして、或る日突然ケロリと帰ってくる

そんな男なのだ。

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