【銀魂】困惑必須の受愛物語

有給休暇 ページ18

「え、ーー地球に？」

「あぁ、数日滞在することが決まった。
春雨では、地球の重役との取引もあるからネ」





窓枠に腰かけた団長が、どこか弾んだ声で告げた。
・・あぁそうか。この人は地球の食事が好きだと
前に言っていた気がする。

確かに、土地ごとに趣向を凝らされた料理は、
見た目も味も申し分ないだろう。






「地球は、いつぶりですかね」

「ずいぶん久しぶりなのは確かだな」




あの星には四季があると言う。春夏秋冬。
記憶違いでなければ、この前行った時は、冬。
空から白く冷たい"雪"が降ってくる銀世界だった。


ーーー今の時期は、どんな景色が見られるんだろう





窓の外にうつる黒と星ばかりを見てきた私から
すれば、どんな景色でも嬉しいものだ。たとえまた
冬だとしても。






「・・A」

「ッ、何ですか？」





我ながらぎこちない返事だ。副団長に言われたことやここ最近の出来事に流されすぎている証拠だ。
情けないことこの上ない。

冷静を装い、団長に目を向けた。







「ーーー地球に着いたら、しばらくお前に休暇をやるヨ」

「え？」


「自由に観光してくれて構わない。出発までには
船に戻ってきてくれたらいいから」


「・・・ちょっと意味わかんないです」

「心配しなくても、有給休暇扱いにしてやるヨ」
「そういうことではなく！」




なぜ突然そんな提案をしたのか、と。
この男のことだし、完全なる気まぐれかもしれない
けど、・・まさか何やらたくらんでいるのか。


疑ぐる私に動じる様子もなく、ふいと窓の外に
顔を向けた団長。どこまでも続く黒に、窓に反射し
その人の姿が浮かび上がった。






「ーーー地球なら、もっとマシな景色が見られる」


「・・え？」

「お前は、眺めるのが好きだろ？前に地球に来た時には、仕事の合間にずっと窓の外を見てた」





確かに、好きかもしれなかった。

例え先が見えない宇宙だとしても、見ていれば
気持ちが安らぐし、地球の冬を見たときは、
感動で言葉を失った。

確かにあのときは仕事だったから、
ろくに眺められなかったのだけれど。






「今回は、目に焼き付けてくるといいヨ」





穏やかな口調で、まるで気遣うような声色。

ーーーどうしてこの人は、時折そんな雰囲気を
滲ませるんだろう。







「・・なら、お言葉に甘えて」





初めての有給休暇は、地球観光に決まった。

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