手を握る ページ22
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遠くで、嫌いな奴の声が聞こえた。
何があるのか、何をしているのか、知りたくはないが、なんとなく分かっていた。
昇降口で待っていれば、川崎が此方に向かって笑顔で手を振ってきたものだから、顔をふいっと逸らした。
あんな事があったものだから此奴とは喋りたくなかったが、呼び出されたら、行かない理由は見当たらない。
「待たせて御免ね」
急いできたのか、額にはうっすらと汗をかいているのが見えた。
「今来たとこやし、直ぐ謝んなや」
思わずキツい口調になってしまい、こんな自分が、また、嫌に思えてくる。
用ってなんなん、と相手の顔を見ずに言えば、川崎は俺の手を取って言うのだった。
「有澤君が、好きだ」
ただ、ストレートにそう言われた。
表情は真剣で、何時もの川崎とは全くの別人に見えるほどだった。
俺は、何も言えずにいた。
手を握り返すことも、相手の顔を見ることもせずに、ただ、その場で突っ立っているだけだった。
それなのに川崎ときたら、俺が口を開くまで待つつもりなのか、俺の顔をずっと見て、手を、ずっと握っていた。
何で此奴は。
そう思い、口を開きかけたが、また、紡いだ。
暫くの間、無言の時が続き、でも、そういうわけにもいかない。
俺はゆっくりと口を開いた。
「俺は、珀以外の事なんか、考へられへんのや」
「分かってる」
「御前なんか、好きになれへん」
「分かってるよ」
「だったら！」
思いっきり相手の手を振り払っても、彼奴は此方を微笑んで見つめるだけだった。
風が、彼奴の髪を揺らし、何故だか、とても苦しくなった。
「僕は君に、僕を好きになってくれ何て言わない、だけど、有澤君に知っていて欲しいんだ、僕が有澤君を好きだって、今はそれだけでいい」
そういって、川崎は笑うのだった。
嬉しそうに、寂しそうに。
俺は無性に辛くなって、涙を流した。
俺が泣いてどうするのか、俺にも分からなかった。
「あほ、ちゃうか……ほんまに、俺、なんか好きになって、どうすんのや」
「夏樹君は優しいし、可愛いから、誰だって好きになるよ、だからほら、泣かないで、笑って」
口許に指を当てて、にっ、として笑う川崎。
馬鹿なやつ、何て……
嗚呼、何時か吹っ切れたら俺は此奴と……何て馬鹿な事を考える。
もしかしたら、一生吹っ切れないかもしれないのに……
その時は、その時、やな。
俺は最後まで、川崎の手を握り返すことはなかった。
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りんご(プロフ) - 誤字ごめんなさいw (2019年10月28日 20時) (
レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 腐男子視点の小説はあまり見ない方でしたが、少しもどかしい感じも含めて、とても面白がったし、いいお話だなと思いました！これからも頑張ってください！！ (2019年10月28日 20時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
群青色の五月雨(プロフ) - 薄氷さん» コメント二度もありがとうございます！！ やっと完結しました。ここまで見てくださりありがとうございました。誉めてもらえて嬉しい限りです。薄氷さんも小説頑張ってください！応援してます。 (2018年1月5日 16時) (レス) id: 227c123589 (このIDを非表示/違反報告)
薄氷(プロフ) - 完結おめでとうございます！！最後の最後まで面白くて、萌えが凄くて、素晴らしかったです、語彙力がなくてすみません。絵も楽しみにしています、完結、お疲れ様でした。 (2017年12月23日 14時) (レス) id: 6feeadb499 (このIDを非表示/違反報告)
群青色の五月雨(プロフ) - 真城双葉さん» 読みにくい小説ですが、読んでいただけらなら嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2017年12月10日 2時) (レス) id: 227c123589 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：群青色の五月雨 | 作成日時：2017年5月28日 15時
