俺たちは ページ15
親友の侭でいよう、そう言われたあの日から、一週間が過ぎようとしていた。
次の日から珀とは元の通り接するようになれたのだが、俺の胸にあるモヤモヤした感情は消えそうになかった。
俺は机に突っ伏しながらずっと考えていた。
あの時は、混乱していた所為もあってか、思わず良かった、と口走ってしまったが、全然良くはない。
珀の事は好きではなかった、でも、今は違う、気がする……。
確信は持てないが、それでも俺の心は変わりつつあるのだ。
ひとつ、小さな溜息をついた。
こんなに悩むなんて、らしくない事だから、頭が馬鹿になりそうだ、否、元から馬鹿なのだけれど。
でも俺、有澤君と珀が一緒にいるの見ると、普通に萌えるんだよな。
ふとそう思えば、前で仲よさそうに話している二人をちらりと盗み見る。
有澤君との誤解、ではないが、とけていないのだが、珀と仲良く、俺的にはいちゃいちゃしているのならば、それならそれで良かった。
暫くの間、俺はバレない様に仲良く話している二人を見ていたのだが、二人を盗み見ているのに気付いたのか、珀は俺の方を見れば、にこりと笑ってひらりと手を振った。
それと同時に有澤君がじとりとした目つきで此方を睨んだのだけれど。
そこで俺は、はて? と、首を傾げた。
有澤君の視線が、俺に向けられていない気がしたからだ。
兎に角俺はその二人から目を逸らした。
そう言えば有澤君、さらっと流してたけど、珀の事が本気で好きなんだよな、なら、二人が付き合うのも夢じゃないかも。
こんな時でも腐男子脳が働いてしまうことにも驚くが、前の自分ならもっと素直に喜べていたのだから、今の状況にも驚きだ。
そんな事を考えていると、後ろから声が聞こえた。
「それは、ちょっと嫌かも」
そう呟く相手、秋君の方を顔だけ向けて見る。
「何が嫌なの?」
椅子をがたがたと後ろに向けて秋君を見つめると、彼はいつもの様にふんわりと笑い、何でもないよ、と言った。
何でもない、なんて事はないのだろうが、俺はそっか、とだけ言った。
その後暫くHR始まりの鐘が鳴った後も、先生が来るまでずっと秋君と談笑していた。
そうしながらも、俺は考えていた。
珀の事を、俺の気持ちを、この胸のモヤモヤの事を。
俺たちの心は揺らぎ始めていた。
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りんご(プロフ) - 誤字ごめんなさいw (2019年10月28日 20時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 腐男子視点の小説はあまり見ない方でしたが、少しもどかしい感じも含めて、とても面白がったし、いいお話だなと思いました!これからも頑張ってください!! (2019年10月28日 20時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
群青色の五月雨(プロフ) - 薄氷さん» コメント二度もありがとうございます!! やっと完結しました。ここまで見てくださりありがとうございました。誉めてもらえて嬉しい限りです。薄氷さんも小説頑張ってください!応援してます。 (2018年1月5日 16時) (レス) id: 227c123589 (このIDを非表示/違反報告)
薄氷(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後の最後まで面白くて、萌えが凄くて、素晴らしかったです、語彙力がなくてすみません。絵も楽しみにしています、完結、お疲れ様でした。 (2017年12月23日 14時) (レス) id: 6feeadb499 (このIDを非表示/違反報告)
群青色の五月雨(プロフ) - 真城双葉さん» 読みにくい小説ですが、読んでいただけらなら嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2017年12月10日 2時) (レス) id: 227c123589 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:群青色の五月雨 | 作成日時:2017年5月28日 15時