fond.248 ページ3
.
最悪だ。
仕事にプライペートを持ち込んでしまうなんて
大人としてどうなのか……
それでも止まらない涙を人に見せたくなくて
戻れる気がしない。
ヒーローである以上、弱い姿なんて人に見せられない。見せたくない。
そんなわたしのちっちゃなプライドが
ぐるぐると身体中に絡まり
この場にわたしを縫い付ける。
一体脳のどこが涙腺を刺激しているのか。
ストレスだというのはどこかで見た。
喜びも悲しみも大きすぎると人はストレスを感じ、落ち着かせようと副交感神経を働かせる際刺激してる
……と定かではない記憶。
要は急激な感情の変化を落ち着ける為なのか。
また頭にチラついた顔に手から溢れる涙が腕を伝う。
交感神経と副交感神経が戦っている。
脳のない物になりたい……。
かなり時間が経ったと思う。
何もしていなすぎて時間の感覚はあやふやだ。
止まりかけては溢れ出す涙に手を焼き
未だホロ、とこぼれてしまう瞳を覆う手は一向に乾かない。
ハンカチを持ち歩くほどの女子力が欲しかった。
せめてヒーロースーツならこの水分を染み込ませる役割を果たすガーゼなんかがあったのに……
こうして現実逃避をしている時点で
私はまだしばらくあの部屋に戻れそうにない…。
同じ空間にいると思うだけで
息が詰まる。
靴が地面を軽く擦る音が聞こえ顔を上げた。
赤い瞳を視線に捉えた瞬間溢れ出す涙を
止める術がわからない。
「ばく、ご…くんっ……」
揺れる視界でぼやける赤を見上げたまま
溢れた感情を垂れ流す私はきっと酷く不細工だ。
それすらも気にならないほど
溢れる感情に頭が追いつかない。
冷たくなってしまった髪にしっかりとした温かい手が触れる。
困りつつも怒らない爆豪くんにまた甘えてしまう。
黙ってただ近くにいてくれる。
それだけなのにひどく落ち着く。
「なァ、小春」
ずっとそばにいてくれた爆豪くんが
ここにきて初めて声を出した。
返事の代わりに爆豪くんへ顔を向け
赤い視線とまっすぐ噛み合った。
冷たい空気の流れだけがとても鮮明に感じた。
「俺は……お前が好きだ。」
ふわ、と漂う空気が少し暖かく止まった気がした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1287人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シーラカンス - めちゃめちゃ面白かったです！実話みがあって読んでてとても楽しかったです！結局誰が水仙の花束を届けてたのかきになります😏 (2022年10月13日 15時) (
レス) @page47 id: 91514afe23 (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - へへへさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！素敵なお言葉嬉しすぎます😭💕愛を深めるお手伝いできていたら本当に嬉しい限りです🥰こちらこそ長い文を読んでもらえて感謝です！！本当にありがとうございました！ (2021年10月20日 8時) (レス) id: 429e4ba01a (このIDを非表示/違反報告)
へへへ - キュンとしたり泣いたり、とにかくこちらまで感情が入ってしまう素敵な小説で、相澤先生のこともっともっと好きになりました！長い間書いてくださり本当に感謝です！天才すぎます！ありがとうございました (2021年10月12日 22時) (レス) @page47 id: c6e1a4e097 (このIDを非表示/違反報告)
すずめ - 返信ありがとうございます！！昨日新しいの読ませていただきました！！夢主ちゃんの幼児化シチュ好きなのでニヤケ顔で読んでました💕学生編の続きも新しい作品の続き、完結も楽しみにしてます！！ (2021年10月1日 13時) (レス) id: e7fe75bfb1 (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - すずめさん» 新しいものを書き始めてしまい、今は手が回せませんが、学生編のリンクこちらのシリーズ1の表紙にありますのでお暇な時にでも読んでいただけたら嬉しいです😊❤ (2021年10月1日 6時) (レス) id: 429e4ba01a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くま | 作成日時：2021年9月16日 17時
