雨と炎は交われない弐【煉獄杏寿郎】 (ページ44)

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第九十一話ページ44

＊

杏「お館様…」

産「あの子を救えるのは、杏寿郎、君だけだよ。一度あの凍った心を溶かしたんだ。次だってできる。あの子には、杏寿郎しかいないのだから。しっかりと話せば、麻友は聞いてくれるよ。」

杏「っはい！！」

産「うん。しかし…あの双子は困ったものだねぇ…。どうしたものか。彼らのことは私に任せて、杏寿郎は麻友の元へ。」

杏「行ってまいりますっ！！」

優しく微笑んだ産屋敷耀哉に煉獄は大きく頷き、目にも留まらぬ速さで麻友の元へと向かった。

＊＊＊

『ッはぁッ…はぁッ…くッそ…』

呼吸が乱れて、心配が痛い。

鬼との戦いの最中にもかかわらず、壁に寄りかかってしまう。

腫れ物扱いされるのが気に食わなくて、辛くて、制止も聞かずに飛び出してきてしまった。

お館様に楯突くなど、柱としてあるまじき行為だ。

鬼は今も迫ってきている。

動かなければ、

こんな雑魚にやられてなるものか

『ッは、ぁ…雨の呼吸__壱ノ型糸雨ッ…』

頸を斬っても、次の鬼が出てくる。

体がもたない。

『はッ…ﾋｭｯ……だめ、だッ…動けッ…』

息の漏れる音がする。

無理をしたら、胡蝶の診察が無駄になってしまう

でも、ここで負けるだなんて、

そんなの、

小「麻友…！」

『…！！な、ぜ伊黒が…』

小「お館様の命だ。全く無理ばかり。お前のその行動で迷惑をかけているということに気づかないのか。」

『…迷惑、』

小「っあ…今のはち、違う。すまなかった。皆お前を心配してる。無理をしないでくれ。」

何を今更、

私では力不足だから伊黒を派遣しただけだろう

気に食わない

『ッ私、一人でやれる…。邪魔をッ…するな、』

冷や汗が頬を伝う。

時間はない。

動けるうちに全て狩る。

小「ッ麻友！！やめろ…！」

伊黒を無視し、私は駆け出していた。

元々長くない命。

お館様に捧げると十年前に心に決めたんだ。

ここで死のうが関係ない。

私は次々と鬼の頸を斬っていく。

伊黒は、他の鬼の頸を斬りながら私に何度もやめろと諭してくる。

うるさい。

私は、まだ、

最後の鬼の頸を斬ろうと刀を振り上げる。

しかし、

『ゔッ…！？がはッ…かッ…』

小「麻友ッ！！！」

あまりの痛苦しさに、蹲る。

鬼の前なのに、

喰われる、そう覚悟した瞬間に私の真横を炎が駆け抜けた。