5. き ページ5
今更だが、Aは俺以外のクラスメイトの前で死にたいなんて言葉は言わないし、自分を傷つける行為もしない。
だから、みんなわからない。
知っているのは俺だけで、何かの優越感が浸っていく。
ただ、教室であんな本を読んでいるにも関わらずみんなが疑問を持っていないことはおかしいと思うが。
誰かが知らないふりをしている？
でも、知っているなら止めるはず。
なら、なんでみんな何も思わない？
あれ、また違和感。
｢…終わったか？｣
｢うん。失敗した｣
片手に持っていた注射をぽいっとゴミ箱に投げ捨てたA。
多分、毒。
こほりと咳を漏らし、少しだけ飛んだ唾液を吹いていた。
今日はいけると思ったんだけど、と残念そうに俺の肩に頭を預ける。
……あたたかい。そう、思いたいのになぜかAから体温は感じられなかった。
今日の終わりを告げていくどこかの鐘の音が響いて、また変わらぬ明日がやってくる。
｢ねぇ焦凍、私、焦凍に言いたいことあるんだけど｣
｢なんだ？｣
急に、口を開くA。
使いあって目を合わせて、何も無い虚無の目に俺が写ったのが見えた。
聞いてはいけない気がする。
聞かなくてはならない気がする。
……体が、動かない。
｢私ね、焦凍の事、嫌いだよ｣
｢…………は？｣
何を言っているのかわからなかった。
反射的に手が動く。
体が動く。
Aの首めがけて手を伸ばして、止めた。
あと1歩のところで理性が戻った。
こんなことして何になるってんだ。
あとで、自分が苦しいだけだろ。
悪い、その一言だけ言って、Aの家を出て行った。
疲れていたんだ。きっと。
そうじゃなきゃ、あんな事しないし、聞きなれた自虐に反応もしない。
わかっていたことじゃないか。
Aが俺のこと好きだなんて期待なんかしてなかった。しては、いけなかった。
それでも。
Aの首を掴もうとした手を見つめて、壁を殴った。
多分、Aが俺を好きになることなんて、もうないんだろう。
｢……ごめんね｣
一人残されたAの、そんな声は聞こえずに。
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緋色 - 他の読んだことのない作品、全て読ませていただきました。切なく美しいオチの作品ばかりで思わず涙腺緩みました…これからも頑張ってください！！ (2018年10月5日 22時) (
レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます！！来世で結ばれますように！！ファンなんて…！！！感謝感激です！！よろしければ他の作品も読んでみてくださいね！ (2018年10月5日 11時) (レス) id: e7a720d445 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - こんなに素晴らしい作品をありがとうございます…夢主と轟くんが来世で結ばれることを祈っています！これからも頑張ってください！！大大大ファンになっちゃいました…これからもにゃんさんの作品を楽しみにしています！！！これからも頑張ってください！！！ (2018年10月4日 23時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 分かりやすく説明してくださりありがとうございます！意味が分かりました！切ない話ですね…夢主は自分の身を犠牲にしてまで轟くんを助けたかったんですね…意味わかった瞬間泣いちゃいました…占ツクでこんなに泣いたの初めてです… (2018年10月4日 23時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - なれた。好きな人を、轟くんを守ったヒーローになれたと、伝えました。。こんなところでしょうか。知りたいところが違ったらすみません！また教えていただけたら説明いたします！ファンだなんて！！ありがとうございます！！ (2018年10月4日 22時) (レス) id: e7a720d445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にゃん | 作成日時：2017年6月23日 20時
