3. て ページ3
「ふふ、焦凍が殺したみたいだね」
「いや、ちが、っ」
無傷、いや、治ったばかりのAが立っているのが見える。
制服だけが汚れていて、Aだけは綺麗だった。
ね、この光景見たことない?
そんな言葉が響いた。
この光景ってどんな光景?
黒煙の中、Aが立って笑っている光景?
わからない。
冷静なはずなのに、何も出てこない。
見たことないならいいよ、とため息をついてぶつかった車の運転手さんに謝っていた。幸いにも機会修理に特化した個性だったようでいいよ、と許してくれたようだ。
帰ろう焦凍、と俺の手を握ったA。
妙に、冷たかった。
言おうか。
もう、止めてくれと。
俺の前で死のうとしないでくれと。
何回も、何回も思ったことを言ってしまおうか。
昔、何度も何度もAに言った。
聞いては貰えなかったから、言うのはもうやめた。
垂直線に傾いた夕焼けが俺の背中を少しだけ熱くした。まるで、言えよというように。
……言うかよ馬鹿か。
止めたら、もうそれでAがやめたとしても、俺のいないところでずっと自分を傷つけるんだろう。
そんなこと、させるわけない。
隣を歩いていたAが、ふと声をあげた。
「…焦凍、あのね」
「なんだ?」
「やめないよ。」
どきり。
俺の心を見透かしていたような目で、分かっていたよな声色で俺を見た。
もういいよ、とやめなくてと掠れた声でようやく言う。
やめなくていい。
傷つける度に、俺が見るから。
俺から離れないで。
そんな神に乞うようにすがり付いている俺はいつになったらAから解放されるんだろうな。
「ばいばい焦凍」
「あぁ、また明日」
俺とAの家に帰るまでの分かれ道。
あまり、俺の家からは近くはないがこうしていつも一緒に帰っている。
クラスのやつらには付き合っているのか、恋人なのかとか噂されていることは知っているが、別に撤回しようとも思っていないし何かを変えようとも思わない。
どれだけAが死のうとしても、俺はAが好きなのだから。
帰ってすぐに、風呂に入ってから布団に入った。
脳裏にフラッシュバックする今日の光景を忘れることが出来ない。
もしこの世界が個性のない世界だったら。
あの瞬間で、Aの人生も俺の人生も終わる。それだけが頭の中で巡り巡って眠れたもんじゃないが、何かを食べろと言われても何も食べる気も起きない。
人の気も知らないで。
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緋色 - 他の読んだことのない作品、全て読ませていただきました。切なく美しいオチの作品ばかりで思わず涙腺緩みました…これからも頑張ってください!! (2018年10月5日 22時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます!!来世で結ばれますように!!ファンなんて…!!!感謝感激です!!よろしければ他の作品も読んでみてくださいね! (2018年10月5日 11時) (レス) id: e7a720d445 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - こんなに素晴らしい作品をありがとうございます…夢主と轟くんが来世で結ばれることを祈っています!これからも頑張ってください!!大大大ファンになっちゃいました…これからもにゃんさんの作品を楽しみにしています!!!これからも頑張ってください!!! (2018年10月4日 23時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 分かりやすく説明してくださりありがとうございます!意味が分かりました!切ない話ですね…夢主は自分の身を犠牲にしてまで轟くんを助けたかったんですね…意味わかった瞬間泣いちゃいました…占ツクでこんなに泣いたの初めてです… (2018年10月4日 23時) (レス) id: 04ecd32bcd (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - なれた。好きな人を、轟くんを守ったヒーローになれたと、伝えました。。こんなところでしょうか。知りたいところが違ったらすみません!また教えていただけたら説明いたします!ファンだなんて!!ありがとうございます!! (2018年10月4日 22時) (レス) id: e7a720d445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃん | 作成日時:2017年6月23日 20時