その笑顔の裏で (ページ40)

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三十九話　帰途ページ40

Aたちはその後、結局二人で三人を運びながら帰ることにした。

太宰は敦と谷崎を担ぐと、Aに話しかける。

「まだマフィアの連中とも関わりがあるんだね」

『うん。マフィアはこの街を守るために動いてるわけだし。私はただ、もう殺しをしたくなかっただけだから』

「そっか」

『治くんみたいに、マフィアや首領の方針が厭で辞めたわけじゃないし。
………まあ、マフィアの方針が、首領の方針が自分の中で正しいかと言われるとそう断言は出来ないけど』

苦笑いをしながらそういうAに、太宰は一つ質問を持ちかけた。

「もし、本当に探偵社がマフィアと戦争することになったら、Aちゃんはどっちに着くの？
森さんは本物のお父さんでしょ？」

『そうだねえ。でもやっぱり、私は探偵社として戦うよ』

「そっか。………じゃあ、これも例えばだけど。もし社長の命と森さんの命、どちらかを見捨てなければならなくなったとしたら、Aちゃんはどうするの？」

『！』

その太宰の質問に、Aは足を止めた。

そして考えるように俯く。

『それがどういう状況かによるけど＿＿＿＿＿
もし何者かの異能力とか、そういう類のものでそういう状況になるんだとしたら、私は根源を潰す』

「それができない状況だとしたら？」

『できないとしても、やり遂げてみせるよ。
大元の根本は無理でも、せめて両方が助かる道を選ぶ』

「……そっか」

太宰はそういうと、何か吹っ切れたように笑った。

「実は、Aちゃんの覚悟がどれだけのものか気になってね。
両方と付き合って関わりを持つことは、どちらか選ぶ時に決断を下さなきゃいけないってことだから」

『大丈夫だよ治くん。
私、経過でどんだけ佳境に追い込まれても、結果的に負け戦は作らないようにしてるから』

「そういう子だったねえ君は。忘れてたよ。
でも、ちゃんと答えが聞けてよかった」

『ふふ、心配はいらないよ』

この時Aと太宰は、お互いが本当の理解者になった。

その後、Aと太宰の距離(物理)が近くなったとか、ならなかったとか。