三十六話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(後編) ページ37
「芥川先輩!」
「下がっていろ樋口。お前では手に負えぬ」
加勢すべく声を上げる樋口を、芥川が制す。
樋口は悔しそうにするが、芥川は目の前の敦だけを見つめていた。
その一瞬後、敦がついに芥川の眼前に迫る。
「疾いッ」
芥川は後ろに飛びのきながら、すぐに黒布を網状にして敦の前に広げた。
しかし敦はそれをもろともせず、芥川ごと跳ね飛ばす。
芥川は後ろの壁に背中を叩きつけられ、口から血を吐いた。
「おのれ!」
樋口は芥川を傷つけられたことに怒り、敦に銃弾を叩き込む。
しかし銃弾は虎の毛によって勢いを殺されたのか、全て敦の体に跳ね返されて地に落ちた。
「銃弾が通らない……!?」
樋口はそれに動揺し、動きを止める。
そして敦は、今度は樋口に狙いを定めた。
「___っ」
「何をしている樋口!
【羅生門・顎】」
樋口に襲いかかった敦を、芥川が急いで真っ二つにする。
切られた時の敦の血が、すぐ近くにいた樋口の顔にかかった。
後少し芥川の攻撃が遅かったら死んでいたのだ。
樋口は助けられたことと、まじかに迫った死への恐怖で混乱していた。
「ち……生け捕りの筈が」
焦って殺してしまったことで、芥川は表情を暗くする。
しかし地面に転がった敦の体は、サラサラと砂に消えた。
芥川はそれを見た時初めて、周りに雪が舞っていることに気づく。
「【細雪】」
そんな声が聞こえそちらを見ると、芥川に倒されたはずの谷崎が、仰向けになりながらも不敵に笑っていた。
隣に座り込むAも、同様に笑っている。
芥川はそれで初めて、敦が死んでいないことを理解した。
「!今裂いた虎は虚像か!では____」
そういって回りを見回す芥川の背後に、大きな影が立つ。
芥川は瞬時にそれに気づき、とても楽しそうに笑った。
「【羅生門・叢】____!」
芥川も敦を迎えうつ準備をし、二人はお互いに攻撃を放つ。
「はぁーいそこまでー」
「なッ……」
そんな二人の間に、一つの間延びした声が楽しそうに響いた。
それと同時に芥川の羅生門はサラサラと砂になり、敦は人の姿に戻りドサッと倒れる。
視界が開けたそこには、太宰が笑って立っていた。
三十七話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(後編)→←三十五話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(後編)
254人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時