その笑顔の裏で (ページ23)

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二十二話　ヨコハマギヤングスタアパラダヰス(前編) ページ23

「すンませんでしたッ！」

「へ？」

探偵社の下にある喫茶【うずまき】

そこで、谷崎は机にバンッと両手をついて、大きく頭を下げた。

敦はそれを見て、混乱したように声を漏らす。

太宰とAはそんな様子をニコニコと見ていた。

「その、試験とは云え、随分と失礼な事」

「ああ、いえ、良いんですよ
(意外と良い人だこの人.............)」

先程の謝罪の意味をようやく理解した敦は、そう言って胸の前で両手を振った。

「何を謝ることがある、あれも仕事だ谷崎」

「国木田君も気障に決まってたしねえ

【独歩吟客】！」

そう言って眉間に指を当て、カッと表情をキメる太宰に、国木田が慌てて言い訳する。

「ばっ...........違う！
あれは事前の手筈通りにやっただけで」

しかし、ガタッと席を立ちかけたところで、ここが店内であることを思い出し、座り直した。

そして話を変えるように、敦に話しかける国木田。

「ともかくだ小僧。
貴様も今日から探偵社が一隅。ゆえに周りに迷惑を振りまき、社の看板を汚す真似はするな。
俺も他の皆も、そのことを徹底している。なあ太宰」

「あの美人の給仕さんに、「死にたいから頸締めて」って頼んだら応えてくれるかなあ」

国木田は太宰に振ったが、太宰は全く関係のない話でうっとりしていた。

それにキレた国木田が店内で説教を始める。

このままでは埒が明かないと感じた谷崎は、改めて自己紹介を始めた。

「ええと、改めて自己紹介すると...........
ボクは谷崎、探偵社で手代みたいな事をやってます
そンでこっちが」

「妹のナオミですわ。
兄様のコトなら...........何でも知ってますの」

兄の言葉に乗っかって自己紹介したナオミは、谷崎の腕に抱きついた。

それに対して谷崎は、いてっと軽く悲鳴を上げるも、ナオミが気にする様子はない。

それを見た敦は、だらだらと汗を流しながら、疑いの言葉を向けた。

「き＿＿＿＿兄妹ですか？本当に？」

「あら、お疑い？
勿論どこまでも血の繋がった実の兄妹でしてよ...？
このアタリの躯つきなんてホントにそっくりで....。
ねえ、兄様？」

うっとりとした表情を浮かべて、谷崎の服の中をまさぐるナオミ。

いや、でも...と何か言おうとした敦の肩に、ポンと手が置かれる。

「(こいつらに関して深く追求するな！)」

「(あ.......はい)」

手の持ち主である国木田と敦は、視線だけでそう会話したのであった。