ソフトバ●クの店長と社員の私【無音(むね)】番外編！

20話 ページ20

お父さんとお母さんが亡くなった、って言ってた人達が話してたんだ。


『お嬢様がいなくなれば、この家は俺達のもんだ』って。


つまり、私はあの家の人達からするといらない存在だったんだろうな。


そう考えただけなのに、悲しくて涙が出てしまった。


あぁ、もるでおくんに迷惑かけちゃうな。


そう思っていると、もるでおくんは頭を撫でてくれた。


「なんで泣いてるかはわかんねぇけど…元気出せよ」


いい人なんだなぁ、この人。


いきなり知らない人が泣き出しても迷惑なだけなはずなのに。


「うんっ、ありがとっ……」


泣きながらだったけど、お礼を言った。


少し落ち着いてから、彼は言った。


「なぁA、さっき親と話してたんだけどさ、お前しばらくこの家にいろよ」


「え」


なんで急にそんな話になったんだろう、と私が言いたいのが分かっていたのかのように、彼は言った。


「無理して体動かしたらまだ傷口が開くだろ？


だからしばらくは安静に、な？」


それが正論なのだけど、正直それは迷惑になるんじゃ……


「嫌か？」


「嫌っていうわけじゃ……」


「なら決まりな。これからよろしくな、A」


当時はそのケガが治るまで、ということだったけど、


何故か引き留められ、結局ずっともるでおくんの家にいさせてもらうことになった。

21話→←19話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す