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41、寂しんぼと忘れ物 ページ41






我が家には沢山の忘れ物が存在する。


その中のひとつに傑さんの香水があった。

取りに来るかも、と思ってたけど死んだ事実をしって尚捨てられずに保管していた。




『…また持ってきます。』




傑さんは私が高専に来る未来をきっと知っていたのだろう。

その上で親友の話をしてくれたり、香水だってわざと忘れて行ったんだと思う。




『よく親友の話をしてましたよ。
甘いものが好きだ、とか。口が悪い、とか。

……巨乳好きとか、ね。』

「そんな事まで聞いてたの?」




傑さんが規定を破って離反した事や、去年騒動を起こして死んだ事は知っている。


高専時代に2人に何があったのかは知らない。
でも本当に仲が良かったことは嫌でも伝わってくる。



携帯のカメラロールを開いて五条さんに渡した。

「いい顔してんね。」と写真の中の傑さんを親指で撫でてから携帯を返してくれた。




「僕も寂しんぼ、なのかもね。」

『そうですよ。だから言ってるじゃないですか。』

「さあ、伊地知のとこ行こーっと。生徒たちのことよろしく〜」




ふらりとその場を後にした。


生徒たちのことよろしく、って。

私は教師じゃないんですけど!




『クッソ逃げられた。まじで教師失格すぎ。』

「Aさーん!こっち来てー!」




生徒たちが何かを察したのか声をかけてくれた。

その気遣いが温かくて嬉しい。




「ほら受け身取ってみろ!生存率上げるんだろ!」




真希ちゃんのその言葉に、パンダくんに投げられてポーンと私の体は再び宙を舞った。


ドン、と地面に叩きつけられる。




『痛すぎる……鬼だ、鬼。』

「なんだよ練習量増やすか?」

『増やしません……』

「鵺、死なない程度に追え。」




そんな声が聞こえて突進してくる馬鹿でかい鳥。




『待ってギブ!!』

「走らないと死にますよ。」




重い体を起こして走った。


走って走って、授業終了のチャイムが鳴るまで走り続けた。




『はぁ、もう無理、死ぬ、これ以上は無理。』

「Aさん大丈夫?」

『…ここで休憩してから行くから。みんな次の授業遅れないように先行って。』




グラウンドで仰向けに寝転がったまま生徒たちにそう言った。


生徒たちは心配そうにしてくれていたけど授業に遅らすわけにはいかない。


渋々みんなグラウンドを去った。




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さしす - とっても面白い!! 続きがきになる〜! 応援してます! (2022年5月26日 9時) (レス) @page49 id: 9bbdd85770 (このIDを非表示/違反報告)
- 作り込みエグいですね!いいなー! (2022年2月20日 14時) (レス) @page33 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
くまこ(プロフ) - emiさん» そう言ってもらえてすごく嬉しいです!ありがとうございます。もうすぐ続編へと移行しますが、そちらでもどうぞよろしくお願いします! (2021年9月25日 11時) (レス) id: 1b6f6e5afa (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - このお話の雰囲気最高に好きです…七海と夢主ちゃんとの距離感も自然で素敵、時間がゆっくり流れてる感じがして読んでいると心が癒されます…お身体に無理のないよう更新されてください!楽しみにしております! (2021年9月25日 0時) (レス) @page43 id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
くまこ(プロフ) - ぬぬ@とかげさん» コメントありがとうございます! (2021年9月15日 16時) (レス) id: 7ddd39ac99 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くまこ | 作成日時:2021年8月27日 14時

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