25、気づいた時には遅い ページ25
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「あれ……」
『気が付いた?もう大丈夫ですよ。でもまだ動かないでくださいね。』
「…あの呪霊は!」
『今は七海1級術師がいるので任せましょう。』
これで一安心。意識が戻った。
あと少し治療が進めば一旦帳の外に出よう。
『よし、動けますか?帳から出ましょう。』
「あの子は?」
『あの子?』
「一般人が巻き込まれて、」
『…私が探すから帳の外まで先に行ってください。』
呪術師にそう告げて、特徴を聞き一般人を探す。
小学生ぐらいの女の子。
……いた、あの子だ。
その場にしゃがみ込んで泣いている女の子。
その子の元へ走った。
『大丈夫?』
「ひぃっ……」
『逃げよう、走れる?』
首を左右に振る女の子。
怖がってその場から動けないでいる。
『大丈夫だから行こう。』
強引に女の子の手を引いて歩く。
怪我はしてないみたいだしこのまま外に出れば、
ピシャ
さっきまで重かった左手が急に軽くなって、
何かが左半身についた。
『うそ……』
急に手が離れて、さっきまでそこにいたはずの女の子はいなくて、遠く離れたところに赤い何かが見えた。
一瞬すぎて何が起こったのかわからなかったけど、思ったより冷静に「あぁ、殺されたんだ」と理解した。
そしてすぐに帳が上がった。
「Aっ!」
『…七海、』
「血が……さっきの攻撃が当たったのか!」
『私のじゃない、女の子がいたから……手を繋いで…』
女の子が巻き込まれているって報告を聞いていれば、
あと数センチ引っ張っていれば、
無理矢理歩かせずに抱っこしていれば、
反対の手で繋いでいれば、
…ごめんなさい。
罪悪感で胸が苦しくなった。
「後のことは任せて帰りましょう。」
さっき私が女の子の手を引いていたみたいに、七海に手を引かれて車は乗って高専へ戻った。
「A、」
『家入さん……』
「辛かったね。」
呪術師の治療は完璧だと褒めてもらえた。
家入さんに褒められて悲しかったことなんて今まで一度もなかった。
でも今日は喜べない。
「救えない命も出てくる。死んでしまった人を元に戻す事なんてできない。
……最善を尽くすのがAに出来る事。今回はイレギュラーだったよ。」
おいで、と腕を広げる家入さんの胸を借りて泣いた。
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さしす - とっても面白い!! 続きがきになる〜! 応援してます! (2022年5月26日 9時) (レス) @page49 id: 9bbdd85770 (このIDを非表示/違反報告)
森 - 作り込みエグいですね!いいなー! (2022年2月20日 14時) (レス) @page33 id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
くまこ(プロフ) - emiさん» そう言ってもらえてすごく嬉しいです!ありがとうございます。もうすぐ続編へと移行しますが、そちらでもどうぞよろしくお願いします! (2021年9月25日 11時) (レス) id: 1b6f6e5afa (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - このお話の雰囲気最高に好きです…七海と夢主ちゃんとの距離感も自然で素敵、時間がゆっくり流れてる感じがして読んでいると心が癒されます…お身体に無理のないよう更新されてください!楽しみにしております! (2021年9月25日 0時) (レス) @page43 id: 9ba5ed02ee (このIDを非表示/違反報告)
くまこ(プロフ) - ぬぬ@とかげさん» コメントありがとうございます! (2021年9月15日 16時) (レス) id: 7ddd39ac99 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くまこ | 作成日時:2021年8月27日 14時