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藍沢ｓｉｄｅ
《耕作には、分からないよ》
Aの声が、泣きそうな顔が頭を過る。
かってにしろと俺が言ったとき、傷ついていた。
だけど言ってしまった手前、どうしても引き返せなかった。
佐倉暁人君のデータを見て、やるせない気持ちになる。
白「悔しいね、暁人君」
藍「移植医療は難しいな。・・・命を救う方法は分かってるのに臓器がなければその医療を提供することもできない」
白「そうだね・・・助ける方法があるのにね」
あぁ、助ける方法はある。
天野奏もそうだ・・・。
藍「君は、凄いな」
天野奏の病室に入りやつれた顔を見る。
奏「え？なんで」
藍「そこまで体調が悪かったら一刻も早く手術してくれというのが普通だ・・・・それほどピアノが好きなんだな。手術をすれば、後遺症が残る可能性はゼロじゃない。だがもしそうなったらリハビリをすればいい。・・リハビリは辛い、時間もかかる。でも君なら、きっと乗り越えて今と同じくらい大好きなピアノが弾けると俺は思う・・・君はとても強い、だから大丈夫だ」
奏「久しぶりに見た、藍沢先生が笑ったの・・・なんか大丈夫な気がしてきた、先生の笑った顔見たら。私、手術を受けるね」
無責任だ、そう罵られようと彼女には生きていてほしい。
奏「でも、一つだけ条件がある。先生が手術して」
藍「約束する」
＿＿＿＿＿＿＿
田所ｓｉｄｅ
緋山に用事があり探していると緒方さんとおにぎり食べながら話している緋山を見つける。
緒「なんかあった、暗い顔して」
緋「今日、私がやったこと・・・熱傷処置、切り傷の縫合、家族への説明、褥瘡の手当て、つまらない処置ばっか。最後は緊急オペに入ったけど患者は死んだ」
・・・・。
緒「らしくないな。緋山先生みたいなタイプは自分の仕事に誇りを持ってるんじゃないの？」
緋「あたしほんとはね、周産期医療っていうお産に関わる場にいたのね。やりたいこといっぱいあったんだけどさ、尊敬してる先輩に頼まれて救命に戻ってきた」
緒「そうか」
緋「後悔はしてない。私が戻ってきたことでその先輩はいま家族との時間がもててる・・・でもさ」
緒「その何とかっていう所に戻れなくなった？」
緋「もう、別の人が入っちゃって」
そうなんだ、何も知らなかったな・・・。
緋「私の居場所なくなっちゃった」
緒「何言ってんだよ、頼まれてくる場所があるだけいいじゃねぇかよ。俺なんか店、首になっちゃったんだぞ」
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作者名：隆佳 | 作成日時：2017年9月23日 22時
