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*




「はじめまして。……小野寺Aといいます」




最初に抱いた印象は、『違和感の塊』であった。




ーー警察庁の上層部に所属している”小野寺”という男が、自分の娘を嫁に貰って欲しいと縁談を寄越してきたのだ。

ただでさえ多忙な毎日。縁談なんぞに構ってられるかと一蹴りしてやりたかったが、断れば後で何をされるか分からない。下手をすれば部下にまで迷惑がかかる可能性だってある。


だから、仕方なくその娘とやらに会う約束を取り付けた。


……今思えば全て彼女の思惑通りだったのだろう。この時は小野寺の姓を名乗っていたから、まさか浅見光の妹だとは思わなかったのだ。





「婚姻届は僕の方から出しておこう。…それから、結婚生活においていくつかルールを決めておきたいんだが、構わないか」

「………大丈夫です」




普通の女性なら嫌になるぐらい面倒で理不尽な決まり事を押し付けても、Aは文句を言うこともせず笑顔でそれを受け入れた。

彼女の柔らかな笑顔を見る度に、どこか既視感を覚える自分がいた。





**




「……寝てるのか?」




全てを知ったのは、結婚してから一ヶ月が過ぎた頃だった。

翌日の仕事が無くなったことを知らせようと思い、彼女の部屋の扉をコンコンとノックする。…が返事は返ってこない。


仕方なく「開けるぞ」と一言申してから部屋に入れば、ベッドの上で寝落ちてるAの姿があった。





「はぁ……変な所で間抜けだな、君は」




普段の彼女は隙がなくて、リラックスしている様子も見たことがない。僕が自宅にいる時間が少ないからという理由もあるだろうけど。

ため息混じりにそう呟いて、安らかに眠っている彼女に布団をかけてやる。





「……、ん…」

「………?」




何かをぼそぼそと言っているようで、起きたのかと思い耳を澄ましてみると。







「…おねぇ、……ちゃん………」








『だったら、せめて……せめて最期に妹に会わせて。あの子には私がいないと…っ、』





不思議と狼狽えはしなかった。それが、浅見光を死なせた僕の宿命なのだと悟っていたから。






「………A、」





これまで抱いていた違和感や既視感の正体。


彼女は僕に愛されるために、亡き姉の仕草や雰囲気を真似ていたのだ。自分が大好きだった姉を。

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モミジ(プロフ) - この作品、最高です!この作品を読んで感動して泣きました。新作も読んで見ます!これからも応援しています! (2019年5月5日 16時) (レス) id: d4cb7d7d86 (このIDを非表示/違反報告)
ringo6349(プロフ) - こんばんは!完結おめでとうございます!ずっと私の中で物語を完結させたくなくて読めなかったのですが読めてよかったです。今回もとても素敵で好きなお話でした。本当にてなさんの書かれる物語が大好きです!忙しいので時間はかかるかもしれませんが新作も絶対読みます (2019年4月26日 22時) (レス) id: 66d3f8785b (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 華さん» 嬉しい限りでございます…複雑な心境を書くのがすごく難しかったです。コメントありがとうございますー!! (2019年3月29日 14時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すごいです…。私、占ツクの小説で泣いたの、初めてです。夢主の悲しみとか嫉妬心とかが分かりやすくて、一気に読んでしまいました。完結おめでとうございます!! (2019年3月28日 21時) (レス) id: 1c08efcab1 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 蓮-Ren-さん» ありがとうございます!そう言っていただけると凄く嬉しいです…(´∇`) (2019年3月27日 13時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年3月21日 16時

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