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*


ここで佐伯景の名前を出すわけにはいかない。彼女の印象が確実に悪くなるだろうし、降谷との関係が崩れるのも可哀想だ。




「……少し気になっただけ。貴方はあまり
笑わないから、その…私といても、」


「………」


「でも、もう大丈夫だから。心配しないで」




…納得がいかないのか降谷はドアから手を離そうとはしなかった。仕方なく「もう寝たいから、手どけて?」と恐る恐る言ってみる、と。




「…僕も一緒に寝る」

「は?」

「今日は僕のベッドで寝よう」

「………は?」





言葉の意味がよく分からない。
………寝る?降谷零と、一緒に、寝る?
……………いやよく分からない。


混乱状態の私を置いてさっさと食器を片付けた降谷は
リビングの電気を消すと、私の手を引いて自室へと向かった。

慌てて「は、入らないでって
私に言ったでしょ…」と訴えれば、





「今は特に見せられないような物は置いてないし
寝るだけなら大丈夫だろ」

「大丈夫とかそういう問題じゃなくて…」

「明日は午後からポアロに行くだけだから
早起きもしなくていいしな……ほら、寝るぞ」




この男、なんでこんなに話を聞かないんだ。不幸にも就寝の準備を全て終えていた私は抵抗の術がなく、仕方なしに彼のベッドへ潜り込んだ。


……彼のベッドは、当然彼の匂いがする。




「………」




ハロは別室で寝てしまったから、個室に二人きり。しかも同じベッドで。彼が背中を向けて横になっていることが唯一の救いだろう。


何となく落ち着かないので、もぞもぞとしていると。不意に降谷が「A、」と私の名前を呼んだ。




「僕が…どうして君を選んだのか、分かるか?」

「………仕事のためじゃないの?」

「流石に僕だって、一生を添い遂げるかもしれない
相手を選ぶ時ぐらい、仕事のことは後回しに考えるさ」




彼の声はどうしてか安心出来る。こんなにも嫌いなのに、声だけは嫌いと言いきれない。こっちへ寝返りを打った降谷が、ゆっくりと手を伸ばしてきた。







「直感だったけど、君を初めて見た時思ったんだ。
ーーーーーーこの人とならきっと、退屈しないだろう…って」





骨張った指で何度か頬を撫でると、降谷は今まで見たことのない柔和な微笑みを浮かべた。


驚く前に体を抱きしめられて、目をぱちぱちと瞬かせる。…実感はなかったが恐る恐る背中に手をそえれば、彼は満足げに息をついた。






………初めて、彼と夫婦らしいことをした。

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HALO - お互い実力は認めあってますし大丈夫ですよ!!同じ似た境遇ですからきっと共有すれば乗り越えられる素敵な夫婦になれますよ♪♪ (2019年3月21日 0時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» そうですよね…!よいお友達になれそうです!きっと乗り越えられたら強い夫婦になれそうですね(´∇`) (2019年3月20日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 降谷さんもきっと誤解を知ったら赤井さんといい関係築けそうですよね!!だから夢主ちゃんも乗り越えて降谷さんと幸せになって欲しいなぁと思います! (2019年3月20日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» ごちゃごちゃしてまいりました…wそうなんです!降谷さんが赤井さんをはちゃめちゃに憎んでいるのと似ているような感じにしたかったんです(語彙力)憎すぎて毎日降谷さんのことばっかり考えてたらいいなあとか思っております (2019年3月19日 17時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 複雑になってますねw降谷さんもライが自殺を止められなかった事に対して殺したいほど憎んでいるのと同じな気もしますね!!夢主ちゃんが好きになってるなぁって思うし紙一重なのでしょうか? (2019年3月18日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年3月1日 0時

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