50 ページ8
-
｢…すまなかった、｣
張り詰めていた糸がぷつんと切れて
私の背中を支える秀一の顔を見ただけで
ボロボロと涙が溢れた。
頬にキスを落とされて、潤んだ視界に
見たこともない表情がぼんやり映る。
｢ずっとこうして、お前を助けてやりたかった。
俺が臆病だったせいで…辛い思いをさせてしまったな｣
｢お前を大切に思っているなら、あの時
お前の傍にいてやるのが本当に正しい選択だった｣
｢ｰｰｰｰｰｰｰ……今からでも、許してくれるか？｣
敵がいつ来るかも分からない。
けれど秀一は私の顔だけを見据えながら
本心を話してくれた。彼の腕の中にいただけなのに、
いつの間にか恐怖心は少しずつ消えていった。
｢……秀一、｣
彼が私と別れる前。宮野明美という女性を利用し
組織に潜入したらしい。FBIだとバレて、
彼女を置き去りに秀一は私の元へ来た。
ｰｰｰｰｰｰｰ…そして、私に別れを告げた。
調べればすぐに分かることだった。けれど、
彼が何の理由もなしに私を捨てたとしたら。
…そう考えただけで怖かったのだ。
｢私だって、臆病よ｣
｢お母さんも貴方もいなくなってから
ずっと一人で生きてきた。何度も貴方に
会いに行こうとしたけど、…怖くてできなかった｣
｢………貴方が殺されたって聞いて、
私がどんな気持ちになったか分かる？｣
頭が真っ白になった。
死ぬ。それはもう二度と会えないということ。
強請ったって努力したって叶うことのない
残酷な現実が突きつけられて、
夢の中にまで彼が現れた始末だ。
今思い出しただけでも背筋が凍りそうで
言葉を詰まらせた秀一を睨み上げた。
.
｢……っ、もう、…二度と死なないで…！｣
あんな思いをするのはもう嫌だった。
呆気に取られた秀一は
すぐに目尻を下げて頬を綻ばせる。
昔と変わらない、優しくて柔らかな顔。
｢………了解｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 426人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ringo6349(プロフ) - 暫く占ツクを離れてましたが、久々てなさんの作品を読んで本当に良かったです泣 完結お疲れ様です＆ありがとうございました！また降谷さんとの幸せな日々やジンに追われていた時の話などありましたら是非読みたいです！お体をお大事になさって下さい！好きが止まらない (2019年3月26日 21時) (
レス) id: 66d3f8785b (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 完結お疲れ様です。面白かったです！！ (2019年2月22日 21時) (レス) id: 74107eb362 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - BARAPIさん» ありがとうございます！お薬のおかげで順調に回復気味です…！ある程度元気になったら番外編書きたいな〜って思っております！ひぇぇ嬉しい……感激です(*ﾟ▽ﾟ)ﾉ (2019年2月20日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
BARAPI - お疲れ様でした!!体調大丈夫ですか?よくなったら番外編かいてくれると嬉しいです!!この小説も作者さんも大好きです! (2019年2月20日 21時) (レス) id: 281a5b8b80 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：てな
| 作成日時：2019年2月16日 21時
