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you side



「っ、ぅ…げほ、…!!」



時間が経過したからといって、環境が悪ければ
傷の痛みは消えない。癒えたと思っていたが
単なる思い過ごしだったようだ。

ウォッカの端末に搭載されているマップを
見る限り、どうやらここは建物の地下らしい。



痛む脇腹を押さえながら建物の外へ出れば
一年ぶりの月が空に浮かんでいた。






(…まずは、どこに行けばいい?……)





警察に連絡したいところだが
ジンに気付かれて手錠を爆破されても困る。

仲間が近くにいないことを確認して
ウォッカから盗み出した拳銃を構えた。
頭まで痛み始めてきて、足がふらつく。






「はぁ、…っ、……は、……」





正直、怖くて仕方がない。


味方は誰一人としていない。
いつ誰かに殺されるかも、いつこの両手が
バラバラになるのかも分からないのだ。





…恐怖を誤魔化すように両目を強く瞑ると
微かな足音が聞こえてきた。






(……ひ、…かり)





荒い呼吸を出来るだけ静めていれば
曲がり角の向こうから青白い光が見えた。

それは徐々に近付いてくる。


すぐに逃げようとしたが、足が縺れて
バランスを崩してしまった。






「…っ、……!」





意を決して拳銃を両手で構える。
負ければゲームオーバーだ。
絶対に生きて帰らないといけない。





(………どこに?)





帰る。


一体どこに私の居場所があったというのだろう。
大罪を犯した私の帰る場所は、
死の向こうにある地獄なのではないか。




死んだらお母さんに会える…なんて都合のいい話は
ないだろう。けれど楽になれるのは確かだ。






(前にも、こうなったっけ…)





彼が止めなければ私はあの時死んでいた。
…彼は、きっと何度でも私を止めるだろう。









.









.









「………A?」









.









暗闇の中でエバーグリーンの瞳が見開かれる。




長い間聞こえることのなかった優しい誰かの声に
ずっと愛していた彼の、秀一の姿に、
一年間流すまいと我慢していた涙がぽたりと零れた。









「…ばか……っ、…遅い…」







ずっと待っていた。

ずっと、彼に傍にいて欲しかった。









.

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ringo6349(プロフ) - 暫く占ツクを離れてましたが、久々てなさんの作品を読んで本当に良かったです泣 完結お疲れ様です&ありがとうございました!また降谷さんとの幸せな日々やジンに追われていた時の話などありましたら是非読みたいです!お体をお大事になさって下さい!好きが止まらない (2019年3月26日 21時) (レス) id: 66d3f8785b (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 完結お疲れ様です。面白かったです!! (2019年2月22日 21時) (レス) id: 74107eb362 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - BARAPIさん» ありがとうございます!お薬のおかげで順調に回復気味です…!ある程度元気になったら番外編書きたいな〜って思っております!ひぇぇ嬉しい……感激です(*゚▽゚)ノ (2019年2月20日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
BARAPI - お疲れ様でした!!体調大丈夫ですか?よくなったら番外編かいてくれると嬉しいです!!この小説も作者さんも大好きです! (2019年2月20日 21時) (レス) id: 281a5b8b80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年2月16日 21時

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