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…
(銃で撃たれた右腕に弾が掠った両足。
雨で体も冷えきっている…)
止血をして一通りの手当は済んだが、
まだ起きる気配のない彼をベッドに寝かせる。
青白い顔色を見る限り一時間以上前から
あそこにいたのだろう。すぐに帰って病院に行けば
ここまで酷い状態にはならなかったのに。
「………馬鹿ね。本当に」
思ったよりも掠れている自身の声に驚いた。
眠ったままの彼の額に手を伸ばして、
少し撫でてみる。こうして見ると人形みたいだ。
(着替えて、取り敢えず夕飯を作らないと)
きっと何も食べてない。彼の仕事は
めったに休息を取れない、加えて
この怪我では休めるものも休めないだろう。
.
「行くな」
有無を言わさない声色にはっとした刹那、
「ーーーーーっ、え、あっ…!?」
強く手首を引かれて、どさりとベッドに戻された。
彼の体をなんとか押し潰さないよう
両肘を顔の横に置けば、ぼんやりとした
眼差しで私を見るアイスブルーの瞳と目が合う。
「……いつから起きていたんですか」
「さっきだよ…君に包帯を巻かれてる時かな。
心地よくてまた眠りそうだったが」
「離してください。ごはん、作らないと」
離して、ともう一度頼む。正直私か彼が
少しでも顔を引き寄せれば唇が触れてしまう、
そのぐらい距離が近かったのだ。
暫く見ることのなかった綺麗な瞳は
ゆらゆらと揺れている。
「なあ…お願いだから、戻ってきてくれないか?」
「………」
ーーーーーーーだから早く離れたかったのに。
腕を動かすのも痛いはずなのに。彼は骨張った
大きな手を私の頬に滑らせて、睫毛を伏せた。
目尻をやんわりと撫で、いつになく
弱々しい姿を見せるその人は
追い討ちをかけるように言葉を続ける。
「A、なんであの時お前は出て行ったんだ?
僕に睡眠薬を飲ませてまで……」
「お願いだから、離して」
お願い。
そう口にして力の抜けた彼の腕から離れる。
傷付いた彼の顔なんか見たくなくて、寝室のドアを
力一杯閉めれば、やるせない気持ちが残った。
(………弱虫)
勝手に震える下唇を噛み締めた。
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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時