番外編おわり ページ49
*
｢っ、暴力は絶対駄目なのに…私が、
それを一番知っているのに、でも…でも……っ｣
父親代わりの男に散々暴力を
ふるわれてきた彼女だからこそ、
その辛さを充分理解しているのだろう。
｢貴方のことを何も知らない人が…
貴方を笑うのは嫌だった…、…っ｣
心臓を掴まれたような、そんな衝撃を受けた。
Aは誰にも心を開かなかった。
いじめられても誰かへ相談もせず、怒りもしない。
勿論泣いて悲しんだりすることもなかった。
だから、彼女が自分のために
怒ってくれたことが嬉しかった。
｢…そうだったんだな。ごめん、｣
｢……零くん、のせいじゃ…｣
｢後で謝りに行こう。僕も一緒についていくから｣
｢だからもう泣くなよ。な？｣と頭を撫でて微笑めば、
Aは潤んだ瞳を柔く細め顔を綻ばせてくれた。
.
(………こんなの、惚れないわけないだろう)
恋心を自覚したのはその瞬間だった。
薄ら赤くなった頬が緩められていて、
僅かに口角が持ち上がっている。
誰も見たことのない、俺が一番好きな彼女の表情。
曇りのない綺麗な笑顔を向けられたその時。
彼女が好きだとはっきり確信した俺が
思わず涙で濡れたAの唇に、
キスをしたのは言うまでもないだろう。
*
｢へえ…な、なんというかA先生も凄いですね｣
｢はは、でも蘭さんも同じことをすると思うよ？｣
えっ、と顔を赤くした名探偵を笑い飛ばした。
そして遠くで子供達や友人に
囲まれているAへぼんやりと視線を移す。
やっと挙げられた結婚式。
体が元に戻った新一君やシェリーも
祝いに来てくれて、何故か沖矢昴がいたが
今日はスルーすることにした。
｢…幸せそうだな｣
純白のドレスを少し歩きずらそうに
引き摺っていたが、そんな所も可愛らしくて
思わず噴き出してしまうと軽く叩かれた。
｢…、！｣
俺の視線に気付いたのか、こっちに
目を向けたAが控えめに微笑みかけてくれた。
(……本当に、よく笑うようになった)
出会った時は泣いてばかりだった。
たとえ涙が出てなかろうが
瞳は"助けて"と訴えていたのだ。
『……結婚しよう』
皺が目立つシーツの上で、跪きもせず
口をついて出たプロポーズは本当は忘れたいのだが。
『…、……はい』
今までにないくらい嬉しそうに
幸せそうに笑ったAが
あまりに愛おしくて
忘れられなかったりする。
.
……end
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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます！気づくの遅くなってすみません…！感動していただき嬉しみです(´∇｀) (2019年3月10日 22時) (
レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました！これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます！結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい！！と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜！50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです！できるならお願します！ (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てな
| 作成日時：2019年1月20日 0時
