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*


背中に手を差し入れゆっくりと彼女を抱き起こす。
そして、もう一度仕切り直すつもりで
彼女の少し濡れた目尻を親指で拭った。




「……やり直そう。二人で」

「…………」




『ああ、この人は本気なんだな』と、僅かに目を
揺るがせた彼女の心情が手に取るように分かった。
案の定Aは「…本気?」と小さく口にする。





「ああ。だからーーーーーーー」





もう一度、









.









「っ、A!!?」







戸惑うように胸を押さえていた片手を
自身の手で柔く包もうとした時だった。


乱雑に開けられたポアロのドアを見やる。
俺は思わずその手をぴたりと止めて、
彼女は揺らがせていた目を見張った。





「…………」




血色の良い唇が、震えたまま
音を発さず確かに動いた。




ーーーーーーおかあさん、と。






(…どうして、何であの女がここにいるんだ)



酷く狼狽えた俺を見向きもせず、
あの時よりも老けた彼女の母親は
Aに抱き着いて嬉しそうに声を上げている。



彼女が、Aが、お前のせいで
どれだけ人生を狂わされたと思っているんだ。





「久しぶり〜!寂しかったでしょう…?
探したのよ、貴方が孤児院に無理矢理
入らされたって聞いてショックだったんだから」


「……なんで、…」




ここにいるの。


明らかに彼女の表情は母親と感動の再会を
果たして喜びを感じているものではない。
過去に何度も見た、酷く怯えてる顔。




「去年に釈放されたのよ。貴方が心配で…丁度
二階の毛利探偵事務所に依頼するところだったの」

「……」

「さ、帰るわよ。話したいことが山ほどあるんだから」




釈放されても、もう彼女の前には
現れないとばかり思っていた。

自分が彼女を攫うように連れ出したあの時
追いかけてこなかったのだから。

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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時

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