【名探偵コナン】プリンスはマドンナが好き【降谷零】

番外編…2 ページ49

…


「駄目です」

「降参してくれ」


じり……とベッドに追い詰められたAを
強引に組み敷いてから約三十分。

先程からずっとこの攻防が続いているのである。

その原因は、というと。


「そろそろいいだろ？」

「………」


その原因は、体の関係あれそれということである。


「まさかお前、恋人になった覚えはないとか
ふざけた事をほざくんじゃないだろうな…」

「………そんなこと、思ってない…」

「…じゃあ何で駄目なんだ？」

「……べ、べつに…」


やけに今日は素直だな、と怪しんでいたところで

「そうやってぶりっ子してれば俺が引くとでも？」と囁いてやれば「…………ちっ」と舌打ちをして
また抱えていた枕に顔を埋めてしまった。


「『焦らなくてもいいよ、ゆっくり二人の
ペースでやっていけばいい…』とか言えないわけ」

「俺はもう充分待った」

「いや自己中すぎるだろ」

「今まで俺にぞんざいな態度をとってきた
お詫びにお前を抱かせ……」

「言わないでよ！！！！」


ろ、と言う前にAがもってた枕を
俺に向かってぶん投げた。
それをキャッチして脇に置いておく。


「……降谷に抱かれたくなんかない」

「………」


濁点の付くようなその言い草にむ、とするも
Aは依然として俺と一向に目も合わせない。

そんなに嫌なのか。





「……わかった」

「…、」

「少し頭冷やしてくる、お前はもう寝てろ」




おやすみ、といつものように彼女の頬を撫でてから
放り出されていたスーツのジャケットを羽織る。

確かに性急すぎたのかもしれない。
……が、俺もこの女ももう子供じゃない。


(……焦りすぎか…？…ダメだ、まさか
こんな幸せな悩みを持てるなんて…)


モヤモヤとした気分と共に
今まででは考えてもみなかった彼女との接し方に
幸福感を覚えていた。そんな時。


くん、とシャツを引っ張られた。




「…………いかないで」


「………」




うる、と今にも零れ落ちそうな瞳に見上げられ、
思わず「はぁ……」とため息をついた。




「………いいよな？今更やだとか駄々こねるなよ」


「………、……」




無言は肯定の意。

珍しく彼女から強請るように押し付けられた唇に

張り詰めていた理性の糸を決壊させないよう、
愛する彼女の名前を呼んでやった。









・・・・番外編END

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