【呪術廻戦】摩訶不思議言行録 2 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:18 hit、合計:22,556 hit

4 ページ4

正午少し前、もうすぐ始まる交流会に向けて歩き始める。

前を歩くゆうじの顔を見ながら、先程のモヤモヤについて考える。

"死"はゆうじが呪術師をしている上で土台ともなるところに位置する概念だと思う。
少なくとも、以前のゆうじは｢相手死ぬってこと？｣なんて、聞かなかったと思う。

この期間に、なにかあったんだ。
ゆうじを変えてしまうほどの、何かが。

だってあの言葉は、ゆうじの戦闘中の選択肢の中に今まで無かった｢死ぬ｣というものができたということの表れだから。

それはいいこと？わるいこと？
どっちなのか、わからない。

｢A、大丈夫か？顔色悪いぞ｣

｢めぐみ…大丈夫。でも、ゆうじ…｣

｢Aも思ったか｣

こくりと頷く。めぐみもゆうじが何処か違うことに気づいていたらしい。めぐみは1度目を伏せて、ゆうじに話しかけた。

｢虎杖、大丈夫か？｣

｢おーっ、なんか大役っぽいけど何とかなんべ｣

｢そうじゃねぇ。何かあったろ｣

｢あ？なんもねーよっ｣

｢…うそ｣

｢Aまで～。どうしたんだよ｣

笑って何も無いと言うゆうじをじっと見つめる。
瞳には、真実が映る。いつか読んだ本に書かれた一説を思い出した。

黙ってゆうじを見ていた私とめぐみに、最初は笑っていたゆうじがふっと一瞬無表情になって、口を開いた。

｢あった。けど、大丈夫なのは本当だよ。むしろそのお陰で誰にも負けたくねーんだわ｣

｢……ならいい。俺も、割と負けたくない｣

｢何が割とよ。1度ぶっ転がされてんのよ！？
圧勝！！コテンパンにしてやんのよ！！真希さんのためにも！！｣

｢…そーいうのやめろ｣

｢明太子！！｣

｢そう！真希のためにもな！｣

めぐみの負けず嫌いな一言に、みんなが便乗する。
いつもの日常が、戻ってきた感じがする。
きっとこの気持ちが、｢安心｣なんだ。

｢Aも、俺は大丈夫だからさ。そんな悲しそうな顔するなよ。な？｣

みんなの笑顔がいつまでも見れるように、私だって強くなったんだから。

｢もう、いなく…ならない、で｣

ぎゅっと生きていることを確かめるようにゆうじの手を握った。

呪術師の私たちに、そんな約束は意味ないはないけれど。今だけは私を安心させて欲しかった。

｢おう！｣

ゆうじは笑って手を握り返してくれた。

｢そんじゃ、まぁ。勝つぞ｣

ビシッと決めたゆうじ。
｢何仕切ってんだよ｣と、まきに後ろから蹴られなければ、完璧だったけれど。