怪演女優 Thirty Eight (ページ46)

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鐘の音の正体は今いる場所の下から聞こえてきたようで、手すりや望遠鏡のある見晴らしのいい場所から下を覗くと、そこには、

「おめでとうー！」

「結婚おめでとうー！」

真っ白なウエディングドレスを身に纏った綺麗な女性と、その隣に立つタキシード姿の男性をフラワーシャワーで祝福しているたくさんの人がいた。

あぁ、あの大きな鐘はこの教会から鳴っていたのか。

こんな素敵なロケーションで結婚式が挙げられるなんて、凄く幸せなんだろうなと思いながらその光景に見蕩れていると、足にもみじの葉が当たる。

そちらに目を移し、視界を元に戻す時に樹くんの方を見ると、

田中「…………。」

樹くんはなんとも言えない目で結婚式を挙げている二人を見ていて、その姿を見た瞬間、樹くんの中にある不安の正体が分かったような気がした。

高所恐怖症だからか、ぎゅっと手すりを掴んでいる手の上から自分の手を重ねると、それに気付いた樹くんは私の方にゆっくりと視線を移す。

「どうした？もしかして高いところ怖い？」と大丈夫を装って聞いてくる樹くんの目を見ていると、自然と口が動き、思っている事が出ていった。

『大丈夫だからね。』

田中「……え？」

『……所謂、恋人が一緒にいるようなイベントとお仕事が被っちゃって一緒にいれなくても、私の樹くんに対する気持ちは絶対に変わらないし、樹くんと恋人になれた事、後悔なんてしてないからね。』

田中「…………。」

『……だから、樹くんはお仕事頑張って。』

よくもまぁこんなに思った事が口からぽんぽんと出るもんだと自分でも感心したけれど、それがなんだか恥ずかしくて樹くんから目を逸らす。

目を逸らして教会の方に目を移すと、樹くんは思いっきりぎゅっと抱き締めてきて、思わずバランスを崩してしまいそうになりながらなんとか堪える。

横からぎゅっと力強く抱き締めてくれている樹くんの表情は分からないけど、その力強さからさっきまでの不安な様子がなくなってる事に気付く。

田中「……、俺と付き合った事、後悔してるんじゃないかって思った。」

『……どうして？』

田中「……ジャニーズって、クリスマスとかお正月とか関係なく色んな仕事が決まるから、それで二人の間ですれ違いが起きて恋愛が終わった先輩、たくさん見てきたから……。Aちゃんも後悔してるんじゃないかなって。」

『……そうだったんだ。』