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重曹を入れてもらった後、樹くんと話しながらカラメルのような色になった物を割り箸でぐるぐると混ぜていると、色味が柔らかくなっていった。
こうなったらキッチンペーパーに中身のシロップを移し、バターを塗った鉄の板で上からぐっと押してまるい形を作っていくらしい。
この作業が一番難しいらしく不安だったけど、まぁこういうのは勢いが大事だから。という言い訳をして思いっきり上から鉄の板を押し付けた。
『あっ、まるくなった!』
田中「え、すげぇ!イカゲームの型抜きのあれだ!!」
『えーっと、この後、型を押し付ける……クッキー作る時の型の方が原作らしさ出るからそっちでやっても大丈夫?……傘の形はないけど。』
田中「うん、そこは任せる。」
家にいくつかあった中から、まるいクッキーを作る為の型を丸くなったポッキの上に乗せて、さっき丸くした鉄の板で型ごと上から押し付ける。
そのままゆっくりと鉄の板を外し、ポッキにくい込んでいるクッキー用の型を最後の最後で失敗しないように気を付けながら外す。
すると出来たのは、
『……本物だ。』
田中「え、待って、イカゲームに出てたよね?これ。」
『出てた。絶対出てた。』
田中「Aちゃんまじ天才だわ……。」
『本当?』
田中「うん、これ再現できんのはすげぇ……。まじ俺の彼女天才……。」
『ふふふ、じゃあもう一個作っちゃうね?』
田中「あ、ねぇ、次のクッキーの型はさ、ハート型にして?」
『うん、いいけど……原作にはない形だけどいいの?』
田中「うん、なんか、Aちゃんからの愛を貰った感じしない?」
両手でハートを作ってドヤ顔で私を見てくる樹くんに、どんな反応を返すのが正解なのかが分からず、今となってはもう定番の指ハートを送った。
すると樹くんは「うわああ、Aちゃんからの愛貰っちゃった、らびゅ〜♡」とテンション高め、声高めで言ってくるので、吹き出してしまう。
特別な事をした訳でもなく、本当に些細な事をしただけでも素直に喜んでくれる人が私の事を好きになってくれたなんて、本当に感謝しかない。
そんな本心がバレてしまったら、きっと恥ずかしくて死んでしまう。
そんな事も思っているなんてまさか思わないだろ、というように樹くんから目線を逸らし、「さっきみたいにお砂糖入れてくれる?」と話し掛ける。
すると樹くんは楽しそうに返事をして、またお砂糖を二杯入れるのだった。
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