episode 119 ページ29
・
神谷 side
神谷「…神谷です。…押しかけるような形になってしまってすみません、二階堂さんの事が心配で…。」
いつもより優しい口調を意識して話しかけてみても、扉の向こうから二階堂さんの返事はなかった。
その時点で少しだけ傷付いてはいたのだが、それでもめげずにもう一度優しい口調を意識して話し掛けた。
神谷「二階堂さんが元気なら、いいんですけど…。」
普段、誰にもこんな優しい言葉を使わない。
精一杯頑張った優しい口調も二階堂さんには届かず、やはり扉の向こうからあの優しい声は聞こえてこない。
むしろ、部屋にいるのかさえも不安になった。
それほど二階堂忍が去った部屋は静かで、なんの物音もせずに、ただゆっくり過ぎるスピードで時間が流れた。
…生きてるよな。
神谷「…二階堂さん、大丈夫ですか。」
それでも返事はない。
俺が見た二階堂さんの最後の表情が、まるで生気がないような暗い表情をしていたので、余計に不安になる。
本当に、今思っている事が起きていたら。
神谷「二階堂さん、返事してください。返事がない場合は、安否確認の為に無理矢理にでも扉開けますから。」
それでも、扉の向こうから返事はなかった。
もう言ってしまったのだから、やるしかない。
俺は二階堂さんの部屋の扉のドアノブに手をかけ、扉を押して、開かずの間と化した二階堂さんの部屋に入る。
すると、そこには、
神谷「…え？」
真っ暗な部屋で地べたに座っている二階堂さんと、その周りに散りばめられていたキャンバスが目に入る。
そのキャンバスには、黒島沙和の絵が描かれていた。
まるで黒島沙和、本人が目の前にいるような感覚に陥るほど、二階堂さんの絵はリアルで少し狂気を感じた。
そんな想像もしていなかった光景に驚いていると、そこで座っていた二階堂さんがようやく口を開いてくれた。
『…未だに夢を見るんです。』
神谷「…え？」
『あの日ホテルで、自分の罪を告白し始めて。それだけで頭がいっぱいなのに、友達だと思った事ないって。』
神谷「…………。」
『…朝起きると、その記憶を一番に思い出すんです。あの時の記憶が怖くて、辛くて、胸が痛むんですよ。』
本当に薄い笑みを浮かべて黒島沙和の事を話す姿に、必死に俺が知っている二階堂さんを探そうとするけれど、
あの二階堂さんは、どこを探してもいなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1001人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そある(プロフ) - こんにちは。突然連絡をしてしまい、すみません！あなたの番ですの再放送をしており、この夢小説の内容が気になって、読んだ結果とても面白い、楽しいと感じました。完結おめでとうございます！作者さんにはとても感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。 (2021年7月10日 16時) (
レス) id: c056380204 (このIDを非表示/違反報告)
橋本@かんな(プロフ) - 完結おめでとうございます！全話楽しく読ませていただきました。終わってしまうのが寂しいです…。作者さんには「ありがとう」でいっぱいです。お疲れ様でした！ (2019年11月10日 10時) (レス) id: f44fa375d7 (このIDを非表示/違反報告)
ユーナ(プロフ) - 完結おめでとうございます！いつも陰ながら応援していました。とても読みやすく本当に面白くてキュンとして完結したのも少し寂しいです ただ本当にありがとうございました！この小説に出会えて良かったです (2019年11月10日 2時) (レス) id: cd6555e146 (このIDを非表示/違反報告)
がなと(プロフ) - 完結おめでとうございます！いつも楽しみに待っていた小説でした。本当に面白かったです！ (2019年11月10日 1時) (レス) id: 9453040fcf (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 135話に誤字がありました。「同性」ではなく、「同棲」です。 (2019年11月9日 22時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
