【ツイステ】でかけよ、オンボロ寮(仮)

208.何もできないことが ページ8

酷く惨めだったんだ



彼女に何もできない自分も、それに対して何も咎められないことで居場所を得ている居心地の悪さも


(今日も、笑ってくれる)


何度言葉で言い聞かせても、そのモヤモヤは日を追うごとに増す
そのたびにいつしか彼女の笑顔を見る度にそれを思い出すようになった




(きっと明日も、この先も)



自分に何があったとしてもそれはきっと変わらない


なんだか自分が何も出来ないことを、彼女を見る度に思い知らされるようで



(俺が名前を呼ぶたびに、「ユウくん」って笑い返してくれるんだろうな)




そんなことを考えてしまう自分も、彼女を理由にしてしまう自分の何もかもが嫌になった


蹴られても罵られても何も感じずに動かなかったトコロが、今になって感情を作り出して溢れて溢れて止まらない




ユウ(緑、…風の魔法)


相手の持つマジカルペンが光ると、ペンを中心に風の軌道が生まれて空気が擦れる音が聞こえる

風の魔法は、時には刃物のように鋭くなる
これは授業で最初に習ったこの世界では子供でも知ってること


あぁ、グリムを先に返して置いてよかった

大丈夫だよ
水も被ったことだってあるし、火で髪が焦げたことだってこの時に限ったことじゃない
この程度に比べたらフロイド先輩に締められる方がよほど怖いだろ
アザでもなんでもほっとけば治る




少しくらい切れたくらいで何になる？




(あの人の顔につくより、ずっといいよ)




あの優しい笑顔にそんなものが残るくらいなら、この方がいいに決まってる




生徒1「動くなよ、変なとこ当たったら自己責任ね」





(……ｯ)





ビュンッと捲き上げるような音に、俺は拳を握りしめぎゅっと目を瞑った




(...大丈夫、









大丈夫だから)









ﾄﾞﾝｯ






ユウ「えっ」









『...間に、合ったぁ…！』


ユウ「…え」

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