65話 ページ15
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由良だろうか。いや、それにしては肩幅が大きい様な……炭治郎か伊之助か?
そう思い目線だけを上へ見やると、そこに居たのは金髪の彼。
『……ぜんいつ、?』
「………」
名前を呼べど反応しない善逸。
ただその表情は良いと言えるものでは無く、悪く言えば顔色が悪い、気持ち悪いのか……?
『ねえ善逸どうしたの、? 体調悪い? 珠代先生に診てもらった方が……』
心配の声を掛けながら彼の肩は手を伸ばすが、その手はバシッという音共に宙で止まった。
『えっ、』
掴まれた左腕をそのまま引っ張られ、おわっという声と共に椅子から立ち上がる。
えっえっ、えなにこれ。何かの企画でもやってるんですか????と聞いてみたいがそんな雰囲気じゃなかった。
ただ無言で私の手を引いてズカズカと歩いていく。
転びそうな体制の中何とか善逸に着いて行くが、私には善逸のその行動の意味がまるで分からない。
ただ掴まれた腕から何か形容し難いものが流れ込んでくるのを感じられた。
そのまま彼は校舎の中に入って行く。いつもの校舎とか違ってやはり静かだ。
外からは生徒達の応援する声が聞こえて、あぁ私の出番がリレーで終わってよかったな、なんて呑気な事を考えていた。
『ここっ、て』
善逸が立ち止まったところは【保健室】で、鍵がかかっているかと思ったらそんなことも無く、躊躇なくその扉を開けた彼は未だに私の腕を掴んでいる。
「……Aちゃん、そこ座って。足、怪我してるでしょ」
『あっ、』
そう言われて、確かに私は怪我をしていたと思い出す。その事を認識したからか、じわじわと足の痛みは増していき思わず顔を歪めた。
指示通り椅子に座れば彼は手慣れた様子で靴下を脱がす。露わになった素足は少し痛々しい。
赤紫色に腫れ上がった周辺には所々血が出ている。
明らかに悪化してんな…と苦笑いする私に、善逸は私の足から視線を外さない。
『あっ、そーいえば、なんで善逸は怪我した事知ってたの?』
何か小っ恥ずかしい気がして、思わず話題を振った。それでも彼は一言も話さず、ただ時間が流れるばかり。
気まずい、本当に。誰かこの雰囲気をぶち壊してくれ、と切実に願っていた時、善逸が言葉をこぼす。
「Aちゃんってさ、昔からそうだよね」
『へっ、…な、なにが?』
「自分が怪我したり、危ない事しても誰にも言わない癖」
なんですぐに言わないの。そう言った彼の声色は、確かに怒っていた。
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Alice - ( ,,`・ω・´)続きが早く見たいです!.更新頑張ってください (2023年2月9日 7時) (レス) id: 37c62558af (このIDを非表示/違反報告)
アオ猫又(プロフ) - 一気読みさせてもらいました!更新楽しみにしてます!! (2022年1月1日 21時) (レス) @page19 id: 6f2bf6bdd1 (このIDを非表示/違反報告)
もろん - オモシロかったです!次の更新はいつでしょうか。 (2021年6月11日 6時) (レス) id: 2c8540451a (このIDを非表示/違反報告)
リリア - すみません、誤字があったので言いますね。68話の最後の方の、「嗚呼、今日で何度目だろうか。」の「今日」が「鏡」になってました!間違ってたらすみません!! (2021年4月3日 23時) (レス) id: 6d42949a76 (このIDを非表示/違反報告)
リリア - めっちゃおもしろいです!!!!!早く更新してくださいませ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (2021年4月2日 10時) (レス) id: d7aea1f85d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐の中の棒人間 | 作成日時:2020年1月19日 22時