３週間【青】 (ページ41)

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Hikaru side

3限はA組男子の授業。

先週の体育館での球技の授業から一変して、今週は男女別に校庭で陸上の授業の週になっている。

1人ひとりの50m走のタイムを計測する為に生徒たちに指示を出していた時、視界の端に気になる人影を見つけた。

校舎の2階の廊下からこちらの様子を見ている人。

すぐにAだってわかった。

あいつ、3限は授業ないのか。

もしかして俺の授業見てんのか？

俺もAがどんな風に授業をしているのかかなり気になっていたし、ちゃんとやれてるかなーって毎回心配で。

だけど、体育を受け持つ実習生の俺が、教室での授業を見に行ける機会なんてあるはずもなかった。

俺は結構ちゃんとやってるぞってアピールしようとAの方を再び見れば、全く目なんて合わない。

それもそのはず。

Aは俺のことなんて見てないんだから。

確実にAは熱心に誰かを目で追っていた。

もちろん距離もあるので、誰って特定は現段階では難しかった。

だけど、

照「次、渡辺ー！」

渡「うーい」

俺が渡辺の名前を呼ぶと、再びAの首の動きが渡辺に合わせて移動する。

…俺の勘が間違ってなかったらだけど、多分Aは渡辺を目で追っている。

表情はもちろん遠くて読み取れないものの、立ち止まって見ている辺り気になってることは確かだろうし。

初めは自分のクラスの生徒だから心配で全体を見てるのかと思った。

…もしくは俺を見てるのかなって。

そんな自分が恥ずかしすぎる…

その証拠にやはり、Aは渡辺が走り終わり少ししてからその場を去ったようで姿は見当たらなかった。

おい、マジかよ…

思い返せば初日からAは渡辺の名前を口にし、頭を悩ませていた。

だからこそ、渡辺の他の授業の様子も気にして見ていた説がまず1つ。

もう1つは…

「先生ー？」

生徒たちに呼ばれてハッとする。

岩「あ…悪い。よし、じゃあ次は幅跳びの場所に移動して！」

授業中なのにぼんやり考え込んでしまうなんて俺らしくない。

渡辺は最近少し笑うようになった。

さっきもタイムがかなり早いことを告げたら「っしゃー！」と喜んでいたし。

可愛い奴じゃんて、最初の無愛想だった頃からの渡辺の成長過程を密かに喜んでる自分もいた。

…なぁ、A。

おまえもそうだよな？

実習生として、生徒を気にしてるだけだよな？