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「…安心しろ。もう、手荒な真似はせん」
「?」
閉まった襖に視線を向けたと思ったら、ふと親父さんが言った。
「あれのこと、本気なのか改めて見極めさせてもらった。…少々、手荒であったのは謝る」
あれは多分、Aのことを指すのだろう。
…てことは、さっきまでのことは全て親父さんが仕組んだ事だったのか。
決して最善とは言えない行動も多々あったように思えて、思わず目を泳がせる。
「そのような身の上だ。いつどうなるか分からないだろう?…だから、Aのことは託したくなかったし、一緒にさせたくなかった」
それに、身分も違うからな。と付け加え、親父さんが言った。
…そんなことは分かっていたつもりだったが、さっきのAを見て、その考えは浅かったことを知った。
待っている者と行く者。同じようで、全く違う。
「だが、ようやくわかった」
「え?」
「力だけが、全てで無いことを」
親父さんは、少しだけ頬を和らげそう言った。
力…?
たった一言なのに、たくさんの意味が込められている気がしてならなかった。
「…Aのもとに行ってやってくれ。…土方さん」
「…っ!あっ、ありがとう、ございます」
親父さんは今までとは打って変わって、笑顔で俺を送り出してくれた。
ああ、早くAに会いに行かなくちゃな…。
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作者名:土方美零 | 作成日時:2018年10月5日 21時