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本当は一人でなんて闘わせたくなかった。医者みたいな事は出来ないけど、そばにいて手を握ってやるくらいさせて欲しかった。あいつ一人でいたら何でも背負い込んじゃうから…無機質な病室に一人なんて、もっと、
随分と細くなってしまった背中を見送った日の事を毎晩のように思い出して、ベッドの中で涙を流すけれど、もう遅い、…もう。
「あの時、追いかけてれば良かったのかな、あいつ…すげえ辛そうな顔してた」
「みつ、…実はね、多分その後だと思うんだけど、太輔から連絡来てたんだ」
「っ、なんて、」
「少しの間、今までとは違う病院に行ってくるって。もう俺じゃ守ってやれないかもしれないから、その時はひろのことよろしく、って」
お前じゃなきゃ…、そんな言葉は口には出せずに心の奥底に沈んでいった。あいつだって、何も自ら望んで離れていったわけじゃない。あの日、俺に向かって振った、震える手がそう言っていた。
「その時聞いたんだ、俺。どういう意味だって。そのままの意味だよって、それしか答えてくれなかったけどね、」
「ほんと…昔からそういうとこあるよな、全部一人で、っ」
「俺に言わせれば、みつも似たようなもんだけどね。辛いって一言言ってくれればいいのに、それが言えないでどうせ一人で泣いてたんでしょ？」
俺にまで隠さなくったっていいんだよ、
その一言にまた、泣かされる。小さい子をあやすような優しい声に、ずっと気張ってた心が徐々に解されていくのがわかる。
辛かったでしょ、そう言って抱きしめられた瞬間、自分を制御していた何かがガラガラと壊れていった。涙も本音も、もう、止められない。
「っう…あいたい、あいた…い…っ！」
キリッと鋭いのに、どこか優しくて可愛らしい奥二重の目。シャープで華奢な輪郭。俺よりもうんと高い鼻。ぷっくりと厚くて形の良い綺麗な唇。女子みたいに細い手首。俺を呼ぶ、低くて色気のある声。
すべてが恋しい。俺を射抜いたあいつのすべて。
今までは触れられる場所にあったのに、今ではもうどこにいるのかさえもわからない。つらい、触れられないことがこんなにも辛いなんて。
…それからどれくらい泣いたかな、長針が半周はしたと思う。
どっと感情が溢れて、ただ泣くだけの俺を、横尾さんは「一人にしたら壊れちゃいそうで怖いから」って、この建物の二階、つまり店のすぐ上にある家に泊まるように言った。泊まって、って泣きそうな顔で。
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茉莉花(プロフ) - nicole155さん» 初めまして。実は中盤からちゃんと描けているか不安になっていた部分もあるので、素敵な感想を頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます！ (2018年8月14日 1時) (
レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
nicole155(プロフ) - はじめまして。お話、とてもおもしろかったです。いい意味で、お話の展開がわからなさ過ぎて、とてもハラハラしました。蜃気楼がテーマだったと知って、あらためて蜃気楼リピートしてます。素敵なお話をありがとうございます。 (2018年8月8日 8時) (レス) id: 5edbe27f7b (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - なみこさん» はじめまして、コメントありがとうございます！こちらこそお読み頂きありがとうございます！え〜…嬉しいです＾＾笑 これからも頑張りますのでよろしくお願い致します！ (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - 白雪さん» ファンだなんて…！泣 こちらこそありがとうございます！本当に嬉しいです…これからも頑張りますのでよろしくお願い致します！ (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
なみこ(プロフ) - はじめまして！更新ありがとうございます！本当に個人的に大好きなお話なので更新されるたびに声が出てしまいます笑 これからも楽しみにしております！ (2018年7月23日 15時) (レス) id: 3a6b1b4e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉莉花
| 作成日時：2018年7月5日 18時
