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突然俺の前に現れた、名前すらわからない病。
毎日何錠もの薬を飲んでも、吐き気や頭痛を催すような強い薬を飲んでも、全く良くならなかった。
こんな毎日ならいっそ…そう思ってしまうような日々の唯一の支えは、
『おっす、調子どう？』
いつもそう笑って、病気を患う前と変わらずにいてくれた恋人の存在だった。恋人が変わらずにいてくれるから、俺も何とか俺自身を保つことが出来ていた。
けれど、それで治るわけではなく。
きっと無理して笑ってくれていたであろう恋人に、来る日も来る日も、管に繋がれた腕や小さな容器を抱えて震える弱々しく情けない姿を見せてしまっていた。
毎日何回も、何分も続く吐き気よりも何よりも、それが辛かった。俺は、彼の笑顔が好きだったんだ。
もし俺があいつの立場だったとして、毎日あいつのそんな姿を…と思うと、考えるだけでも気が参ってしまう。し、俺の方が弱ってしまうと思う。
だから、俺は一人で闘うと決めた。そしたら、あいつ…ひろが少しは楽になれると思ったんだ。…それなのに。
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優秀な先生がいると聞いてすぐさま移った病院の病室には、俺ひとり。たった３日で心が折れそうになった。自分で一人で闘うと決めたのに。ひろのいない病室は、無機質すぎて怖かった。
『あれ、また顔小さくなった？』
そうからかうように笑ってくれる恋人が、
『大丈夫…ほら、俺ここにいるから』
強い副作用に耐える俺の手をぎゅっと握ってくれる恋人が、
いつになっても現れない病室は、頭が狂いそうだった。それでも、負けるわけにはいかなかった。もう一度、この腕で抱きしめると決めていたから。
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晴れて退院し、もう通院しなくても良いと言われた頃には、春が来ていた。約束の春は、俺を待ってはくれなかった。
病に打ち勝ったけれど、心の底からは喜べなかった。だって、もうひろは新しい道を歩んでいるはずだから。新しい、俺の…いない人生。
そんなひろの新しい人生を想像すればするほど、"新しい道を…" なんて格好つけた事言わなければよかったと、自分が憎く思えた。
久しぶりに開いた携帯の電話帳に残る履歴。
履歴の一番最後の日付はもう随分と昔のもの。この頃はまだ幸せだった。
そんな事を思って、泣いたのを覚えている。
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携帯に残る写真。部屋に置かれたままの物…諦めが悪いのは、昔から。成人して何年も経った今、変えろなんて言われても無理だ。思いながら車を走らせた。
向かう先は(元？)恋人の職場。
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茉莉花(プロフ) - nicole155さん» 初めまして。実は中盤からちゃんと描けているか不安になっていた部分もあるので、素敵な感想を頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます！ (2018年8月14日 1時) (
レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
nicole155(プロフ) - はじめまして。お話、とてもおもしろかったです。いい意味で、お話の展開がわからなさ過ぎて、とてもハラハラしました。蜃気楼がテーマだったと知って、あらためて蜃気楼リピートしてます。素敵なお話をありがとうございます。 (2018年8月8日 8時) (レス) id: 5edbe27f7b (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - なみこさん» はじめまして、コメントありがとうございます！こちらこそお読み頂きありがとうございます！え〜…嬉しいです＾＾笑 これからも頑張りますのでよろしくお願い致します！ (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
茉莉花(プロフ) - 白雪さん» ファンだなんて…！泣 こちらこそありがとうございます！本当に嬉しいです…これからも頑張りますのでよろしくお願い致します！ (2018年8月6日 14時) (レス) id: 1e53697028 (このIDを非表示/違反報告)
なみこ(プロフ) - はじめまして！更新ありがとうございます！本当に個人的に大好きなお話なので更新されるたびに声が出てしまいます笑 これからも楽しみにしております！ (2018年7月23日 15時) (レス) id: 3a6b1b4e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉莉花
| 作成日時：2018年7月5日 18時
