難攻不落の向井くん

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青Side


どうか嘘であってくれと思う。

頼むからどうか俺の勘違いであってくれと。


「目黒…」

「…っ」


もう一度名前を呼ぶと唇を噛み締めて俺と目を合わす。

その表情だけで全てが伝わってしまうくらい、
俺らは仲良くなりすぎてしまったのかもしれない。


「…ちょっとあっち行こ。な？」

「うん…」

「ごめん二人とも。ちょっと自販機行ってくるわ」


今にも泣きだしそうな目黒を引っ張ると
俺のお茶もよろしく〜なんて呑気なふっかの声が聞こえて
この時ばかりは心からふっかに腹が立った。


「違う、よな…？」

「…っ」

「康二じゃ、ないよな…？」

「…ご…めん」


どうか俺の勘違いであってくれと願ったそれは
呆気なく崩れ落ちた。

苦しそうに謝る目黒になんて声を掛けるのが正解なのか、
分かる人がいるのなら是非教えてほしい…


「もう俺、ふっかさんのこと応援出来ないかもしれない…っ」

「いや、だってお前…。どうすんだよ…」

「分かんない…」


俺は二人には幸せになってほしい。

だからふっかが本気で人を好きになったって
知った時は本当に嬉しかったし、
それは目黒でも同じ。

同じなんだよ…


「どっちかだけの味方なんて出来ねぇよ俺…」

「…」

「何でお前らなんだよ…。何で康二なんだよ…」

「俺だって分かんねぇよ…」


だって今までふっかはギャルとばっか遊んでたし、
目黒は年上のお姉さんとばっか遊んでたじゃん

なのに何で康二…？

お前らのタイプに当てはまらねぇじゃん…

なのに何で被ってんだよ…っ


「全然タイプじゃねぇだろ……」

「だから!!!…っ…だから本気になっちゃったんだよ…」


目に涙を溜めて呟いた声は
風の音に消されてしまいそうなくらい
小さかった。


「…」

「…」


沈黙が、怖い…。

目黒と二人になる機会なんて
今までだってたくさんあったし
沈黙だって苦じゃなかったはずなのに、
今はただこの沈黙が怖すぎた。


「俺、ふっかさんに言おうと思う…」

「うん…」

「そして正々堂々と康二を好きでいたい」

「そか。」


そう言って覚悟を決めた目黒に頷く。

きっとふっかは戸惑うだろうけど
友情が壊れることは無いだろう。

ただ俺はそんな二人を温かく見守ってあげようと心に誓った。





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