僕のちょっとした昔話 ページ8
僕のちょっとした昔話。
スカウトされる前の、僕がまだ小学4年生の時。
それはある日突然だった。
その日の授業を終え、帰宅して両親の帰りを待っていた。
共働きで、だいたい帰ってくる時間は夜の7時。
それまでは宿題をしたり、おやつを食べたり、本を読んだり、絵を描いたりして時間を潰していた。
飲み物を取りに自分の部屋から台所へ行った時だった。
お父さんとお母さんのコップがない。
いつもあるところにない。
『…？あれ、お茶碗もない』
その時は、新しく買い換えるんだと思っていた。
でも違った。
いつもなら帰ってくる時間に、両親は帰ってこなかった。
もしかしたらもう帰ってきていて、隠れているのかも。
そう思って、両親の部屋へ行ってみることにした。
『…っ、なんで、』
服も鞄も何もかもが、綺麗さっぱり無くなっている。
靴箱を見ても両親のものは無くなっていた。
母の化粧品も、アクセサリーも。
父の本もパソコンも。
僕だけを置き去りに全て。
『どうして…？なんで…やだ、』
怖くなって、自分の部屋の隅で蹲っていた。
夜の9時を回った時だった。
ピンポーンとインターホンが鳴った。
『っお父さん、お母さん…！』
誰が来たのかも確認しないで玄関を開けると、そこに居たのは両親ではなかった。
『お、伯父さん、伯母さん…？』
「A…」
伯父さんと伯母さんに抱きしめられる。
ごめん、ごめんなさい、と僕を撫でながら苦しそうな声で2人は謝っていた。
本当に、お父さんとお母さんは帰ってこないんだ。
そう察した瞬間、視界が歪んだ。
涙が止まらなくて、ずっと2人に縋って泣いていた。
「ねぇ、A。伯父さんと伯母さんと、一緒に暮らそう」
伯父さんが目線を合わせて言った。
複雑だった。
急に両親が消えたと思ったら、今度は親戚と一緒に暮らそうと言われて。
混乱しないはずがなかった。
『、わかんない、わかんないよ…どうしたらいいの、』
気が付けば視界が真っ暗になっていた。
僕の名前を呼ぶ伯父さんと伯母さんの声が聴こえたような気がした。
急にシリアスぶち込んですみません。
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作者名：うわばみ | 作成日時：2023年4月2日 12時
