▽さらば故郷 ページ1
・
「Aさん、こっちの書類に印貰てもいい？」
『わ、分かりました！』
あれから怒涛の日々が続いた。
毎日渡される紙束に目を通して、1枚1枚に印を押していく。
私の内緒話を聞いた父は度肝を抜かれたといった様子だったが、最終的には苦笑いで許してくれた。
「良いだろう。ただし、お前には生涯ヴェネマーレアの王女としての務めは果たして貰うぞ」
こんな条件の上で。
王族とは常に国の為になる存在でなくてはならない、それは昔から父が語っていた事だった。
「A嬢、進捗どう？」
『あと4枚です……』
大分進んだやん、と優しく笑う彼に苦笑いを返す。
如何せん書類仕事に割く為の時間があまり残されていないのだ。
なにせ夜にはもう我々国に戻らなくちゃいけない。
「王妃にはもう挨拶したの？」
『はい、母も元気そうで』
敗戦のショックから臥せっていたと聞いて酷く心配したが、現状を説明すると僅かに顔色を良くした。
彼女は明日、亡くなった兵の追悼式に参列する予定なのだと宰相は言っていた。
本来ならば私も参列して然るべきなのだけど、お忍びで来てるので今日の内に花を手向けに行くに留めることになった。
「A、準備はいいか？」
『大丈夫です。お待たせしました』
荷物も無いので準備なんて身嗜みを整えるだけだ。
見送りだと言うことで、宰相とジェネロお兄様が馬車の前まで付いて来てくれた。
『ジェネロお兄様、どうかお元気で』
「Aもな…。アイツらの事、すぐには受け入れられないがお前の幸せを願ってるよ」
お兄様はそう言うと、そっと抱擁してくれた。
頭を預けた胸元から身に覚えのある爽やかな香り。
『お兄様、これ』
「お前と揃いで買ったんだ。香水、偶には使えよ？」
優しい彼の腕から離れがたさを覚えていると、謎の衝撃で後ろに身体が引っ張られる。
ぽすんと私の体を受け止めたその人は、人目も憚らず人の首元に腕を回している。
「人の妹に乱暴な真似をしないでくれ」
「ウチの戦利品にあまりベタベタしてくれるな」
『お2方とも此処は外です！おやめください』
バチバチと隠しもせずに火花を散らす男達に苦言を呈すると、両者は暫し睨み合った後どちらともなく溜息を吐いた。
「はいはい、グルさん時間でっせ」
「はよおいでA嬢、お手をどうぞ」
先に馬車へ乗り込んだ2人から声がかかる。
お兄様に別れの言葉を告げれば「早く行け」と笑って背を押してくれた。
「帰るぞ。俺達の城へ」
ラッキー食べ物
すし
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 713人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
宙(プロフ) - はぁ〜。面白かった！！(満足)欲を言えばゾムさん落ちが見たかった笑 (2020年9月7日 10時) (
レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - すずらんさん» こんにちは、コメントありがとうございます！そう言って頂けるのが一番の喜びですので、どうぞこれからも宜しくお願い致します。 (2020年2月12日 12時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - コメント失礼致します。とても楽しんで読ませて頂いております、最高ですありがとうございます… これからも楽しみにしております、応援させて下さい！ (2020年2月10日 15時) (レス) id: 14859b81d2 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - スリジャワルダナプラコッテプリンさん» コメントありがとうございます！微力どころか皆様の応援が最大の力源となっております。ゆるりと進んでいきますのでお時間のある時に是非お付き合い頂けると幸いです。 (2020年2月9日 8時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 澪華さん» こんにちは、コメントありがとうございます。1人目から随分更新が空いてしまったのですがそう言って頂けて幸いです。これからもゆったり進みますので何卒よろしくお願い致します (2020年2月9日 8時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2020年1月25日 15時
