▽静かな食卓 ページ4
・
「それは絶対そっちでしょ」
『こっちの方が可愛くない？』
「俺はこっちの方が好みなんだけど」
『んー……じゃあその色にしよっかな』
肌寒くなってきたある日、新しい服を買う私と彼の間であった一幕。私は淡い色が好きだったけど彼は濃い色の方が好きだった。
買い物終わりに手元にあったのは、色の濃い目な女物のカーディガンと色の淡い男物の縦セーター。
なんやかんやお互いの好みに合った服を買うあたり、私たちは似た者同士だった。
『……あー、あったな。そんなこと』
パッと目が醒める。相変わらず体は嫌な怠さに包まれていたが、くすぐったさの残る記憶に思わず笑みが漏れた。
夢を見る日は大抵冷や汗をかいているので、風呂の準備をして部屋を出る。
「おはようございます、A様」
『おはようございますエリーさん』
「お早いですね」と微笑む彼女は女給のエリーさん。
歳の近く穏やかな性格の彼女は、城に来て始めの頃に仲良くなった人物だ。
世間話なんかをしながら、私は誰かと一緒のお風呂を満喫したのだった。
「お、A。今からご飯なん？」
『はい、ロボロ様もですか？』
「せやな。まぁ、暫くは部屋で食う予定やけど」
食堂までは一緒に来てくれると言う彼には少し疲れが見えた。
3日前の昼過ぎコネシマ様が率いる陸軍部隊が、昨日は鬱様の率いる射撃部隊が某国に向けて進行を始めた。
要は戦争が始まったのだ。
詳しい事は分からないが、彼の役割は遠くから指示を通す仲介役の様なもので総統と前線にいる人を通信で繋ぐ役割を果たしているらしい。
「戦場が遠い時は通信距離の関係で仮拠点を作る事もある。
けど、基本は城の中で仕事するで。機材も多いし」
いつだかロボロ様が仰っていた話だ。
総統が城に居れば指示出しの仕事も楽になるのだが、頑なに戦場地の方へ行きたがるから大変だとボヤいていた。
「どしたん、入らんの？」
『…！いえ、入ります』
どうやら回想している間に到着していたらしい。
首を傾げた彼は、斜めにずり落ちた雑面の端から桃色の瞳を覗かせていた。
「……誰もおらんな」
『皆さまお忙しいですからね』
「マジか、A1人になってまうやん……」
『お気になさらず』
自分の使命を理解している彼は「すまんな」と一言謝りを入れると、事前に用意して貰っていたのだろう食膳を持って足早に部屋を出た。
1人で食事などいつ以来の事か、謎の感慨にふけながら私は食事の前で両手を合わせた。
ラッキーゲーム
hoi
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奥山乃愛(プロフ) - niさんやsnさんにも愛されたいです（恋愛的に）無理せずに頑張ってくださいね！ (2022年11月2日 16時) (
レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - モモさん» お祝いのコメント感謝申し上げます。途中更新期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。ご期待に添えたものであれば幸いです、これからも是非にお付き合いくださいませ。 (2019年11月30日 23時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
モモ(プロフ) - 続編おめでとうございます。リクエストの小説も楽しく読ませて頂きました。ありがとうございますm(_ _)m相変わらず言葉の言い回しが美しく素晴らしい作品だなぁと改めて思いました。冬は何かと忙しい時期になると思いますが、無理をしない程度に頑張って下さい(*^^*) (2019年11月28日 12時) (レス) id: 9f311d580c (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 猫夢さん» こんばんは、好きの一言が何より嬉しいので無問題です…。ありがとうございます。 (2019年11月24日 19時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
猫夢(プロフ) - 語彙力がないけど言いたいので失礼致します。好きです... (2019年11月21日 13時) (レス) id: e485f856c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年9月22日 15時
