3年A組の、闇へようこそ 3幕

____ ページ11

.








溢れる涙が止まんなくて、隼人の胸板に顔を埋めてひたすら泣く。こんなに泣いたの、久しぶりだよ。




『愛してるって、私ね、ずっと、結婚式の時に言おうって思ってた。』




ずっとずっと憧れてた、王子様とお姫様の結婚式。

アイラブユーって言って、口付けする、あのシーンが小さい頃からの夢だった。

でも、現実はそんなに甘くなんかなかったんだ。




『結婚式の時に言おうだなんて、馬鹿みたいなロマンチックなこと考えてた……』




現実は残酷で、おとぎ話なんて夢のまた夢。





『変な意地張って、隼人なら分かってくれるって、伝わってるんだろうなって、隼人の腕の中でずっと思ってた、だけどそれが間違えだったんだって、初めて気づいたの』




あの冷たい雨に打たれながら、ずっと思ってた。

きっともう無理だって。


隼人に会えないんじゃないかって、伝えられないんじゃないかって。


そう思ったら胸が痛くて痛くて涙が止まらなくて、愛してるが止まらなかった。

届かないのに、涙と一緒に愛してるが零れて仕方なかった。




『今伝えられる言葉を後回しにしたらダメなんだって、思ったっ！！！……伝えなきゃいけない気持ちを、ちゃんと伝えるべきだったって、思ったの、伝えなきゃって、伝えられる想いは、今この瞬間に伝えなきゃ後悔する。……だからね隼人』




顔を上げて、涙でグチャグチャな顔でもいいから、ちゃんと伝えなきゃいけないんだよ。

あの時学んだ、大切な感情を無駄にしないように、目を見て、しっかりと、心の底から。







『───────────愛してるよ、隼人』






クシャリと歪んだ隼人の表情にまた涙が溢れる。






甲斐｢俺も、────────愛してるからな｣






その日、初めてこんなにもしょっぱいキスをした。








.

____→←____

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す